2016 Fiscal Year Research-status Report
システムウイルス感染症学:感染ダイナミズムに基づいた病態機構の解明
Project/Area Number |
16KT0111
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野田 岳志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (00422410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 佳 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 講師 (10593684)
渡士 幸一 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (40378948)
岩見 真吾 九州大学, 理学研究院, 准教授 (90518119)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | ウイルス感染症 / エボラウイルス / 数理解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトには、常に体の環境を一定の良い状態(健常状態)に維持する機構が備わっている。これは生体の恒常性維持機構と呼ばれ、病気とはこの健常状態から疾病状態へ推移する事である。例えば、インフルエンザウイルスによる急性感染の場合、一過性の炎症応答・組織障害が生じるものの、通常、生体は健常状態に戻る。ウイルスに感染する事で、生体システムが変化し、病気になった場合であっても、免疫システムの修復機構によって再び健常状態へと回復し得る事に対応している。また、エボラウイルスに感染した多くの場合、出血性ショックを起こし、死に至る。生体システムが不可逆的破綻を起こした状態を意味する。一方、生体システムがこれらのウイルス感染に対して新たな安定状態を作りあげ、その状態を維持する事もある。例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染の場合、ウイルスが自然に排除される事はまれで、多くは長期的に体内に保持される。この場合、ウイルス増殖というストレスとそれに対する免疫応答との拮抗の結果、生体は異なる安定状態(疾患状態)を維持する。しかし、HCVの疾患状態は、抗ウイルス薬の投与によって人為的に健常状態へと戻す事ができる。他方、宿主の遺伝子に組み込まれるヒト免疫不全ウイルス(HIV)による慢性感染では、もはや抗ウイルス薬を用いてもウイルスを排除できず、健常状態に戻す事は出来ない。本研究では、1)ウイルス感染下における生体の恒常性維持・変容を生体システムの変化や破綻の観点から定量的に理解する; 2)疾患を統合的に理解し、それを制御する方法を提案する、ことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ヒトにおけるエボラウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染に対する抗ウイルス薬の併用効果、HIVの増殖機構等に関する数理解析を実施し、多くの学術論文を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降も、生体システムに異なる変化をもたらすウイルス(インフルエンザウイルス、エボラウイルス、HCV、HIV)による感染実験とその数理科学的解析を通じて、感染ダイナミズムに基づいた病態機構の解明ならびに新規治療法の開発を目指す『システムウイルス感染症学』の創出を目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも順調に研究が進展し、様々な条件検討を削減することができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は来年度、種々のマウスモデルを用いた実験に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)