2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of analysis method of transition state for improvement of enzymatic function
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16KT0166
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 卓 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (80344050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 和宏 北陸大学, 薬学部, 講師 (00511255) [Withdrawn]
田中 成典 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (10379480)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 酵素反応 / 遷移状態構造探索 / 活性化エネルギー / 反応経路自動探索プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者と研究分担者で開発した遷移状態(TS)エネルギー分割解析法の簡便性、精度の向上を目指す研究や、巨大分子を核酸やアミノ酸などの断片(フラグメント)ごとに計算することで巨大分子の高精度計算を行なうことのできるフラグメント分子軌道(FMO)法によるTS構造の基質-酵素間相互作用の解析法の開発を行ない、実験研究者がこれらの手法を機能改良酵素創製の有効な手段として利用できるようにすることを最終目的としている。2017年度は、以下の内容に取り組んだ。 1.実験値と対応する活性化エネルギーを与えるTS構造の探索について TSエネルギー分割解析法を改良するためには、妥当な活性化エネルギー値を与えるTS構造の決定方法をまず確立する必要がある。計算精度よりも計算時間を重視している半経験的手法では、室温で反応が起こり得ないような高い活性化エネルギーの値が得られた。そこで、分散力のような弱い相互作用を考慮した非経験的手法でモデル酵素の反応(ハロ酸脱ハロゲン化反応のフルオロ酢酸分解反応)を計算したところ、2段階の反応のうち、反応座標が単純な第1段階の脱フッ素化反応は、数日程度の計算時間で活性化エネルギーの値が実験結果と対応した。しかし、反応座標が複雑な第2段階の加水分解反応では、目的のTS構造を獲得できず、活性化エネルギーを決定することが出来なかった。 2.TS構造探索方法の見直し 1.の結果を受けて、計算に使用する初期構造を複数指定し、その構造を利用した自動反応経路探索プログラムを使用して反応経路を探索することにした。さらに計算コストを下げるため、高い計算精度の領域をこれまでよりも小さくして計算を行なったところ、1.のようにマニュアルで反応経路を決めていた際には見つけることのできなかった高精度でのTS構造を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデル酵素の反応として、ハロ酸脱ハロゲン化酵素のフルオロ酢酸分解反応を使用し、その活性向上のための機能改良酵素作製実験を行っているものの、現時点ではフルオロ酢酸分解活性の向上が期待される複数の変異体酵素について計算結果と実験結果の対応は見られていない。その原因として、高精度の計算における反応遷移状態(TS)構造を獲得するための手法が確立できていないことが考えられる。最終的な研究目的である、TS構造の基質-酵素間相互作用の解析法を利用した機能改良酵素創製の効率化を図るためにはまず、TS構造を高精度で効率よく見つけ出す必要がある。2017年度の後半になって、自動反応経路探索プログラムを利用することが出来るようになり、高精度の計算における反応遷移状態(TS)構造を獲得するための道筋が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、ハロ酸脱ハロゲン化酵素のフルオロ酢酸分解活性向上のための機能改良酵素作製実験だけを行なってきたが、フルオロ酢酸は現在使用しているハロ酸脱ハロゲン化酵素の本来の基質でないため、反応経路探索や機能改良酵素のデザインを困難にしている可能性がある。そこで、まず本来の基質を用いた酵素反応に対して、自動反応経路探索プログラムを利用して高精度の計算における反応遷移状態(TS)構造獲得、活性化エネルギー算出を行なう。そして、得られたTS構造に対してフラグメント分子軌道(FMO)法やTSエネルギー分割法でTS構造の基質-酵素間相互作用を解析する。そして、活性化エネルギーを下げるような変異を見つけ出して実験で確認する。 本来の基質の系で反応経路探索、TS構造の安定化に関わる残基の推定ができたら、これまで行ってきたフルオロ酢酸の分解反応の系にも挑戦する。
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Causes of Carryover |
(理由) 購入予定の試薬や器具類が予想よりも少ない量で実験できたことと、次年度で配分額よりも多く研究費を使用する可能性があったため、差額が生じた。 (使用計画) 差額の分は次年度の物品費に組み込んで利用する。
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