2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0178
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松田 充弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (10709752)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 体節時計 / 人工遺伝子回路 / 振動 / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生命を機械として理解することである。機械として理解するとは、生命をハードウェアとソフトウェア(部品とプログラム・動作原理)の側面から理解する。つまり機械的な機構によって理解することを指す。そのためには複雑な生命を単純化する必要がある。そこで、培養細胞と最小限の遺伝子部品を用いて、注目する生命現象の本質だけを抽出したシンプルな生物らしさを再構成する。 本研究は具体的に、遺伝子発現振動と細胞間同調機構に着目し、それを人工的に培養細胞に再構成するアプローチにより理解することを目的とする。これまでに、CHO細胞に人工的な遺伝子回路を作製し、遺伝子発現振動を再構成しようと試みたが、期待されているものは観察できなかった。そこで本年度は生体内の実際の遺伝子発現振動についての解析を行った。生体内の遺伝子発現振動に体節時計におけるHes遺伝子の発現振動がある。しかしIn vivo環境で測定・遺伝子操作実験を行うのは困難である。そこで本年度はES、iPS細胞から体節時計を持つ細胞細胞である未分節中胚葉細胞をin vitro誘導し、前年度作製していたレポーターシステムを用いて、遺伝子発現振動を観察することに成功した。これにより、この細胞を用いて遺伝子発現振動機構の解析が可能となった。また、遺伝子発現振動を起こすのに十分な条件を満たしたこの細胞用いて、人工的は遺伝子発現振動を再構成することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、これまでの報告から遺伝子発現振動を実現できると考えられる人工遺伝子回路を培養細胞に作製し、遺伝子発現振動の再構成を試みたが、実現できなかった。これはまだ遺伝子発現を実現できる条件が十分に理解されていないことに原因があると考えた。そこで本年度は生体内の実際の遺伝子発現振動を解析・理解することを目的とした。そこで未分節中胚葉細胞で見られる遺伝子発現振動(体節時計)に着目し、その細胞をES・iPS細胞から誘導することを試み、それに成功した。さらに前年度作製したレポーターを用いて遺伝子発現振動を観察することにも成功した。以上のように実際の遺伝子発現振動機構を解析する系を手にすることができたことから本研究課題はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、実際の遺伝子発現振動有する細胞をin vitroでES・iPS細胞から誘導する系を手にした。今後はこの細胞を観察・解析することで遺伝子発現振動を起こす未知のメカニズムを理解することを目指す。また、この細胞は遺伝子発現振動を実現するのに十分な条件を満たしているといえる。そこでこの細胞に人工的な遺伝子発現振動を再構成することを目指す。 体節時計は遺伝子発現振動だけではなく、細胞間同調機構も有している。そこで同調機構に関しても同様の方法で理解・再構成することを目指す。
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Causes of Carryover |
予定していたよりもイメージング等に使用する消耗品費が抑えられたために次年度使用額が生じた。次年度は細胞誘導に使用する増殖因子や阻害剤、細胞培養試薬に費用がかかるため、繰り越し分も含めこれだけの額を使用する。
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