2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ感染を基盤とする胃がん発症機構とその制御
Project/Area Number |
17013001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畠山 昌則 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / CagA / 胃癌 / SHP-2 / FAK / チロシンリン酸化 / 脱リン酸化 / NFAT / VacA |
Research Abstract |
cagA遺伝子陽性ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃がん発症と強い相関を示す。cagA遺伝子産物であるCagA蛋白はIV型分泌機構を介してピロリ菌体内から胃上皮細胞内に直接注入される。細胞内に侵入したCagAは細胞膜に局在しSrcファミリーキナーゼによりチロシンリン酸化を受ける。我々はCagAのC末側に複数個存在するEPIYAモチーフ内のチロシン残基がCagAのリン酸化部位となることを示すとともに、チロシンリン酸化されたCagAがSHP-2チロシンホスファターゼと特異的に結合し、そのボスファターゼ活性を著しく亢進することを明らかにした。最近、変異型SHP-2ががん蛋白として機能することが示され、CagAとの複合体形成によるSHP-2の脱制御が胃がん発症に重要な役割を担っている可能性が示唆される。そこで、CagAにより脱制御されたSHP-2が脱リン酸化する基質分子の探索を進め、focal adhesion kinase (FAK)を同定した。SHP-2はFAKの397、576ならびに577番目のチロシンを脱リン酸化し、FAKキナーゼ活性を抑制した。CagAによるFAKの抑制は、細胞接着班の減少にともなう細胞質伸長ならびに細胞運動性の亢進を誘導した。さらに、CagAはチロシンリン酸化非依存的にNFAT転写因子を活性化することを明らかにした。CagAによるNFATの活性化はもう一つのピロリ菌毒素であるVacAにより抑制される。NFATは細胞の増殖・分化に関わる一連の遺伝子群を制御しており、CagAならびにVacAによるNFATの脱制御は萎縮性胃炎、消化性潰瘍といった多彩な粘膜病変の発症に関わることが示唆される。リン酸化依存的ならびに非依存的な活性を介して、CagAは胃がん発症に向かう多段階発がんプロセスを進めるものと推察される。
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Research Products
(19 results)