2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ感染を基盤とする胃がん発症機構とその制御
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17013001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畠山 昌則 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / CagA / トランスジェニックマウス / 胃癌 / 血液癌 / 細菌性癌タンパク / SHP-2 / PAR1b / MARK2 |
Research Abstract |
ピロリ菌癌タンパク質CagAは特徴的な地理的分子多型性をなし、胃癌発症頻度がきわめて高い東アジア諸国で単離されるピロリ菌が保有する東アジア型CagAならびに胃癌の比較的少ない欧米諸国で単離されるピロリ菌が保有する欧米型CagAに大別される。東アジア型CagAは欧米型CagAに比べてより強くSHP-2癌タンパク質と結合しその機能をより強力に脱制御することから、東アジア型CagAの存在が胃癌多発に関与していることが推察されている。そこで、昨年度樹立した東アジア型CagAトランスジェニックマウス(東アジア型CagAマウス)に加え、本年度は欧米型CagAを全身発現するトランスジェニックマウス(欧米型CagAマウス)を作製した。樹立した欧米型CagAマウスも東アジア型CagAマウスと同様の胃粘膜上皮過形成を引き起こし、胃の良性ポリープならびに胃癌、小腸癌を発症した。しかしながら、欧米型CagAマウスの病変発症頻度は東アジア型CagAマウスに比べて有意に低く、また東アジア型CagAマウスに認められた血液系の異常(白血球増多症、白血病、リンパ腫)ほとんど認められなかった。以上の結果から、東アジア型CagAは欧米型CagAに比べてより強い病原活性/発癌活性を示すことが個体レベルで証明された。 昨年度、CagAがPAR1b/MARK2キナーゼと結合しその機能を抑制することを見出した。PAR1bは微小管結合タンパクをリン酸化することにより微小管の安定性を制御する。微小管は細胞極性のみならず紡錘体機能にも深く関与している。そこで、CagAが紡錘体機能を撹乱することにより有糸分裂に影響を与える可能性を検討した。その結果、CagA発現によりM期細胞周期進行の遅滞ならびに染色体の赤道面整列異常が引き起こされることが明らかとなった。さらに、CagA発現細胞では染色体の多倍体化が観察され、CagA-PAR1b相互作用による紡錘体機能の異常が発癌につながる染色体不安定性を引き起こすことが明らかとなった。
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Research Products
(22 results)