2005 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経回路の普遍構造と発火活動のダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
17021020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 講師 (90252486)
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Keywords | 同期現象 / アトラクター / 連想記憶 / ニューラルネットワーク / up state / down state / AMPAレセプター / 学習 |
Research Abstract |
近年の生理学実験から,神経ネットワークの発火の相関が視覚刺激の情報統合や注意の切り替え等の高次機能に重要な役割を果たしている可能性が示されている.また,スパイクだけでなく閾値下の振る舞い,例えばup/down stateなどが何らかの機能的な役割を果たす可能性にも注目が集まっている.本年度は,以上のことを念頭に置き,発火相関の神経ネットワークにおける機能的役割とup/downstateの生成メカニズムに焦点を当て研究を進めた.最初に,同期発火の果たし得る機能的役割を数理モデルにより検証した.すなわち,STDP学習を行う神経ネットワークを考え,そこに複数の発火パターンを順番に刺激として与え学習をおこなった.このとき,結果として形成されたネットワークでは,初期条件に応じて提示したパターンのいずれかに収束した.(連想記憶的な特性)一方,一様同期入力を入れた場合,学習時に見せたパターンの順番に従い遷移が起こるSynchrony induced switching behaviorが見られた.これは力学的には,非同期的入力のときのアトラクター間にある学習時に獲得した弱い因果関係を反映した遷移のルートが,同期的入力を受けることで活性化したものと考えられる.さらに,同期入力のタイミングに応じて遷移先を複数のパターンにすることも可能である.これらの点に関して理論解析を行い,特殊な状況に限定されない広いパラメーラー領域で実現可能であることを示した.このことから,Synchrony induced switching behaviorは文脈依存で行動を学習する場合の神経基盤となり得るメカニズムであると考えている.更に最近線条体や大脳皮質に見られるup/down stateに関して,その機能的な意味に関して注目が集まっているが,その予備的段階として生成機構の研究を行った.特に線条体への大脳皮質と視床からの入力に関して,シナプス前性のAMPAレセプターがあることが報告されている.その役割に関して数理モデルを用いup stateの安定生成に寄与しているとの結果が得られつつある.これは一度up stateに入ったら,外部入力なしで一定期間安定にup stateを維持できることを意味し,情報のゲートとしての機能との関連性でも興味深い結果である.なお,これらの研究は統合脳の実験系研究者の他の班員との共同研究により始まっている事を付記したい.
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Research Products
(6 results)