2008 Fiscal Year Annual Research Report
特異的シナプス形成過程に関与する分子の同定と動態観察
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17024010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
能瀬 聡直 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高須 悦子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (30282718)
高坂 洋史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (20431900)
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Keywords | シナプス / 神経回路 / ショウジョウバエ / 運動神経 / 筋肉 / Wnt / マイクロアレイ / 標的認識分子 |
Research Abstract |
神経回路網の形成過程において、神経細胞は、でたらめにどんな相手とでも結合するわけではなく、特定の標的細胞を認識し、それとのみシナプス結合を形成する。本研究ではショウジョウバエ神経筋結合系を用い、標的特異性の決定機構を探っている。ショウジョウバエ胚の筋肉(各半体節に30本存在する)は、それぞれ特定の運動神経細胞により支配される。本研究ではこの系を利用して神経の標的認識に関わる分子を探索した。標的認識に働く分子は個々の標的筋肉細胞間で発現様式が異なると予想されるので、筋肉間で発現量の異なる遺伝子をDNAチップにより検出することでそのような分子を同定できると考えた。昨年度までの研究により、異なった運動神経細胞に支配される隣あった筋肉、12と13間で発現差異のある遺伝子を、DNAチップを用い多数同定した。本年度は、そのうちのひとつで筋肉13において発現する分泌タンパク質Wnt4に着目し機能解析を行った。Wnt4の欠失変異体では本来筋肉12を支配する運動神経が、筋肉12に加え、非標的細胞である筋肉13にもシナプスを形成していた。逆に、Wnt4を筋肉12で異所発現させると、筋肉12におけるシナプス形成が特異的に阻害された。これらの観察結果は、Wnt4が筋肉13において発現し、近傍の筋肉12を支配するべき運動神経に対し阻害的に働きかけることにより、それらが正しい標的細胞と結合するように制御していることを示唆している。われわれはまた、運動神経においてWnt4のシグナルを受容する受容体の候補としてFrizzled2とDerailed2を同定した。以上の結果は、非標的細胞からの阻害的なシグナルが、シナプス結合の特異性の決定に必須の役割を果たすことを示した最初の例であり、標的認識の分子機構に関する重要な新知見を与えるものである。
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Research Products
(5 results)