Research Abstract |
爆破実験成果を噴火に適用するため,磐梯1888年,安達太良1900年,セント・ヘレンズ(MSH)1980年噴火での疾風由来サージを再調査・再検討した. MSH噴火では火山体崩壊で誘発された爆発,安達太良噴火では,閉鎖地形内での爆発的噴火,磐梯噴火では,山体崩壊の引き金となった水蒸気爆発に伴って,それぞれサージが発生したとされる.これらは,類質物質を主体とする「ベースサージ」とされるが,MSHのサージ堆積物には相当量のマグマ由来物質も含まれる.サージ堆積物の体積は磐梯が0.01km^3,安達太良が0.0003km^3,MSHのものが0.2km^3である. MSH噴火では1フローユニットのサージが確認され,詳細な調査も行われている.これと比較して安達太良,磐梯の調査を行った.安達太良噴火では発生源近傍で3フローユニット,硫黄川に沿って1フローユニットが確認され,磐梯噴火ではおそらく3フローユニットのサージが推定できる.個々のフローユニットは,岩相の異なる複数の層からなる. 規模や発生原因などの異なるサージ堆積物に,次の地質学的・層序学的共通性が見いだされる:1)給源近傍部では塊状の火砕堆積物が主体で,時にその下位に爆風堆積物が認められる,2)中間地域では塊状部の上に層理の発達した典型的サージ堆積物が積層する,3)末端域では細粒で,ときに豆石を含む火山灰の薄層が認められる.これらから,疾風由来ベースサージには,高速,低温で希薄な,頭部の発達した,流動化の著しいpyroclastic density currentという流動様態が想起される. Goto et al.(2001)によるスケーリング則を用いて,火口径から爆発のエネルギーを見積もると,磐梯が2x10^<16>J,安達太良が6x10^<13>J,MSHは1x10^<17>Jで,サージ堆積物の体積にほぼ比例する.
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