Research Abstract |
頂芽優勢は頂芽が腋芽の成長を抑制して優先的に成長する現象であり,オーキシンとサイトカイニンが深く関わっている。我々はエンドウを用い,オーキシンが,サイトカイニン生合成の鍵となるイソペンテニル基転移酵素(IPT)の茎における発現を抑制していることを明らかにした。一方,腋芽の休眠に関わる遺伝子として,カロテノイド酸化開裂酵素(CCD)のホモログが同定されている。エンドウのCCDホモログRMS1は発現にオーキシンを必要とし,茎のプラスチドに局在している。つまり,腋芽の休眠と成長を促進する生理活性物質の生合成に,茎組織のプラスチドが関与し,オーキシンでその方向が制御されている可能性が高い。本研究課題では,茎のプラスチドに局在し,オーキシンによって変動するタンパク質を網羅的に同定することで,このオルガネラを理解し,腋芽の成長制御をオルガネラの観点から解析することを目的として研究を行った。 暗所で7日間生育させたエンドウの茎から,分画遠心とパーコールを用いた密度勾配遠心によりプラスチドを調製した。SDS-PAGEによりタンパク質を分離し主要なポリペプチド約20本について,質量分析計を用いたMALDI-TOF MS及びMALDI-TOF-TOF MSで同定を試みた。その結果,約半数のタンパク質が同定された。しかし,実験材料がエンドウであるために,データベースに登録されていないタンパク質が多く,同定は容易ではない。同定のためにはペプチド断片をMS/MS解析してde novoシークエンスする必要がある。その効率を上げるために,H2^<18>Oを用いたトリプシン消化や,N末端アミノ基のsulfonationなどを試み,改善がみられた。一方,頂芽切除前後の茎のプラスチドタンパク質を比較するために,NBS法を試みた。NBS法はトリプトファン残基を含むトリプシン消化ペプチドを質量の異なるnitrobenzenesulfenyl(NBS)基で修飾し,比較する方法である。その結果,両画分で量比の異なるペプチドが検出された。次年度はこれらのペプチドの同定を行う。
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