2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17063006
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
前川 和也 Kokushikan University, 21世紀アジア学部, 教授 (60027547)
|
Keywords | シュメール / アッカド / ユーフラテス / スサ / アムル人 / メソポタミア / 楔形文字テキスト / 領域国家 |
Research Abstract |
本年度の目標は、第1に前3千年紀において「シュメール文字文明」がメンソポタミア北部、シリア・ユーフラテス流域およびイラン・スサ地域にどのように拡大・普及ししていったかを考究することであり、そして第2に、都市社会と周辺の農村あるいは牧畜世界との相互交渉を考察するということであった。これらの課題のために、木年度は前年川のほか、前田徹(早稲田大)、依田泉(常磐大)、松島栄子(法政大)、森若葉(総合地球環境学研究所、が研究連携者としてプロジェクトに加わった。第1の課題にかんしては、前川および前田にようって、南部メソポタミアにける領域国家成立のための生態学的、イデオロギー的要件が考察されたほか、シュメール語彙リストの普及(前川)、シュメール語、アッカド語の相互影響(森)、前1千年紀テキストにおけるバイリンガリズム(松島)が考究、論文が公刊された。また南部メソポタミア地域とイラン、さらにインダス文明地域との交流過程が前川・森によって論じられたほか、松島が約1カ月にわたってテヘラン国立博物館に滞在して、スサ地域から出土した楔形文字テキストを調査した。なおこれは日本人研究者による初調査であり、研究協力体制が継続されることが期待される。研究協力者(長谷川)によるシリア・ユーフラテス中流域ガーナム・アル・アリ遺跡発掘のためにも旅費が充当されている。第2の課題にかんしては、主に前田が前3千年紀から2千年紀にかけての王権思想の変容、アムル系王権の成立過程を論じた。前田の仕事以外にも我々は前年度に開催した共同研究会「シリア・メソポタミアにおける文化接触」での諸報告をさらに改筆した報告集を公刊して、アムル人問題をさらに詳細に考察することができた。アムル人とは、本特定研究の中心課題であるビシュリ山系を故地とする遊牧民であり、彼らが南部メソポタミアに進出する過程を、文献テキストから詳しくあきらかにすることができた。本特定研究では、いまや藤井班がアムル系牧民指導者のものとおもわれる墓群を発掘しており、はじめて文献研究者が考古学発掘にとってもカになりうる局面に立ち至った。その意味でも、平成20年度の成果は充分に到達されたといってよい。なお物費の大部分は、前年度と同様に図書購入に充当された。
|
Research Products
(24 results)