2009 Fiscal Year Annual Research Report
パレスチナにおける都市の発達と「セム」系民族の文化的展開
Project/Area Number |
17063013
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
月本 昭男 Rikkyo University, 文学部, 教授 (10147928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山我 哲雄 北星学園大学, 文学部, 教授 (80230332)
牧野 久実 鎌倉女子大学, 教育学部, 准教授 (90212208)
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Keywords | アナハラト / 古代イスラエル / 聖書考古学 / 初期鉄器時代 / アマルナ文書 / 都市の発達 / 前期青銅器時代 / 古代パレスチナ |
Research Abstract |
1. イスラエル国テル・レヘシュ遺跡の第5次考古学調査を、2009年7月31日~8月31日に実施した。(1)前期青銅器時代II期~III期の石壁遺構、(2)中期青銅器時代の町の周壁、(3)後期青銅器時代から鉄器時代にかけての文化的継続性、(4)鉄器時代後半の居住の性格が確認・解明された。同遺跡では中期青銅器時代II期までには周壁をもつ都市が成立し、鉄器時代I期まで継続した。この間、居住者の民族的変遷は確認されないが、中期青銅器時代に建造された周壁は継続的に使用されている。この時期に、同遺跡が下ガリラヤ地方を支配する都市国家へと発展していったと考えられる。従来、中期および後期青銅器時代の物質文化成立は、アモリ人などセム系民族移動の結果として説明され、鉄器時代I期はイスラエル人による定住期と重ねられてきた。しかしこうしたセム系民族の大規模移動による説明は、本遺跡にみる中期青銅器時代II期から後期青銅器時代にかけての都市構造の継続性、また後期青銅器時代II期から鉄器時代1期にかけての物質文化の連続性からみて、再検討されてよい。特に鉄器時代I期の物質文化の分析は、イスラエルのイッサカル部族が鉄器時代I期に外部から流入し、後期青銅器時代のカナン人と交替したとする聖書に依拠した歴史復元に大きな疑問を投げかける。調査成果は、パレスチナで展開したセム系都市の1事例として、関連した研究成果とともに日本オリエント学会、日本西アジア考古学会等で発表された。 2. 研究代表者がアマルナ書簡の再検討を行い、パレスチナに展開したセム系民族による都市国家の構造について分析した。これらの成果は上述した研究会で総合的に考察された。特に、アマルナ書簡か示唆する中心都市と周辺村落との関係性に関しては、考古学の調査成果とも合致する部分があると確認された。現在、学術発表に向けて準備中である。
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Research Products
(10 results)