Research Abstract |
本研究は,脳や神経の局所的磁気刺激による神経活動の制御,及び新しい手法による神経電流活動の電流分布イメージングや脳波計測により,高時間・空間分解を有する新しい脳機能ダイナミックスイメージング法を構築し,脳機能の動的機構の解明に迫る脳機能研究法の確立を目的としている.本年度は以下に述べるような成果を得た.磁気刺激を用いた脳機能評価においては,ヒト頭部の導電率分布を3次元的に模擬した計算モデルに対して,有限要素法を用いて磁場分布と渦電流分布を計算し,ヒトの大脳運動関連領野や小脳の渦電流分布の計算結果より,強さ数十A/m2の渦電流が,およそ数mmの範囲に集中することが確かめられた.経頭蓋磁気刺激時の誘発脳波の計測において,刺激後15msから誘発脳波の計測を行い,脳内電流分布の推定が可能となった.小脳を磁気刺激した場合の,脳波の空間分布を求め,脳内電流分布の伝搬を調べた.刺激後20ms位で同側の体性感覚野に活動が見られ,その後40msで対側に反応が見られ,磁気刺激による脳内の活動の伝搬を求めることが可能となった.MRIを用いたバイオイメージングにおいては,神経活動電流を検出する際の検出感度を理論的に評価して,10^<-8>Tレベルの磁場まで検出可能であることを示した.また動物実験により,坐骨神経に電気刺激を与えた場合の活動計測を行ったところ,大脳体性感覚野に画像上の変化があらわれた.この位置はfMRIの測定結果とほぼ一致し,刺激後に画像の変化が現れるまでの時間も,神経伝導速度から予測される値に近かった,また,ヒトの脳の導電率分布について,異方性も含めてMRI計測に成功し,脳磁図計測や磁気刺激の誘導電流解析に応用可能な導電率データが得られた.さらに,細胞膜透過性や筋線維の細胞膜構造の変化,脳の水拡散や血流分布など,MRIをベースとした新しいバイオイメージング技術の開発,実証にも成功した.
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