Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (70256197)
鈴木 宏正 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40187761)
近藤 修 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (40244347)
定藤 規弘 国立生理学研究所, 心理生理学研究部, 教授 (00273003)
青木 健一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30150056)
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Research Abstract |
研究実績の概要 1,ネアンデルタールと現世人類の学習能力差の理論的根拠の検討(青木健一) 個体学習,社会学習能力の進化に関する理論集団遺伝学的研究に基づいて,生物を取り巻く環境の時空変化が学習能力の進化を左右すること,とりわけ異質な環境へ速やかに適応する必要性から個体学習能力が強化される理論的根拠を解明し,現世人類の現代的行動の背景には優れた個体学習が存在し,その能力は彼らの急速な移住拡散によって進化し,そこに交替劇の究極の原因が求められるとする作業仮説を提起することが可能となった。 2,ネアンデルタールと現世人類の学習能力差の考古学的証拠の集成(赤澤 威、西秋良宏、米田 穣) 旧人と新人の考古資料は,交替劇の時代状況のもとでの両者の学習行動の産物の残存であり,学習能力のあり方を比較することのできる唯一の物証である。そして,考古資料にみられる文化伝統の継承からは社会学習を,一方,新技術の出現からは個体学習の性質をそれぞれ読み取ることが可能であり,両者の考古資料から技術格差の特質と時空分布を解析することによって,両者の学習能力差の存在を定量的、実証的に検証することが可能であることが分かった。 3,ネアンデルタールと現世人類の学習能力差の解剖学的証拠の検討(近藤 修、鈴木宏正、定藤規弘) 旧人と新人の技術格差の原因を個体学習の能力差に求めるとの仮説が正しければ,それを司る脳の神経基盤に両者の間で違いが存在することになる。そこで,学習能力の神経基盤の詳細を現生人類において機能的MRIを用いて検討し,得られる脳機能地図を,生成する旧人と新人の化石頭蓋、脳鋳型モデルに写像することにより,言語、学習機能領域の定量的比較解析を行い,古神経学的解釈をもって両者の学習能力差の存在を解剖学的に検証することが可能であることが分かった。 4,デデリエ洞窟発掘(赤澤 威、西秋良宏、米田 穣、近藤 修) 洞窟調査によって,旧人ネアンデルタールに先立つ前期旧石器時代(30万年前-)から旧人ネアンデルタールに代表される中期旧石器時代(20万年前-),新人ホモ、サピエンス時代の晩期旧石器(1万4000年前-)まで過去30万年分の考古学、人類学的資料が蓄積され,一帯で起こった交替劇の時代状況と適応的行動の相互作用の様態を考古資料に基づいて具体的に復元し,旧人と新人の間での学習能力の違いの存在を実証的に検証する資料が蓄積された。
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