Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 能典 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教授 (70249910)
上野 玄太 統計数理研究所, モデリング研究系, 助手 (40370093)
染谷 博司 統計数理研究所, モデリング研究系, 助手 (00333518)
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所・ヒトゲノム解析センター, 助手 (10345027)
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Research Abstract |
我々は遺伝子ネットワークの推定に,マイクロアレイデータからの遺伝子発現量の情報と,データベース化された生物学的知識の情報を結合させる枠組みを用いてきた.これは,生物学的知識を無向グラフィカルモデルであるマルコフランダム場モデルとして表現し,DNAアレイデータに現れた遺伝子間相互作用を表すベイジアンネットワークを組み合わせるものである.ベイジアンネットワークを利用した情報処理でもっとも計算負荷の高い作業は最適グラフ構造の探索である.これにはかなりの計算量が必要であるため,工夫したアルゴリズムを強力な並列計算機に実装した.本研究ではGreedyアルゴリズムを用いてグラフのMAP解を求めているが,MAP解に至るまでに探索的に得られた途中解を大量に蓄積し,グラフマイニング技術を用いて多くの因果構造ネットワークに共通する不変的構造及び各ネットワークに固有な特徴的構造の発掘を試みた. また状態空間モデルを用いて,マイクロアレイデータのタイムコースデータ(つまり時系列データ)からの遺伝子ネットワーク推定も試みた.アレイデータは,通常の時系列データと違い,その時点数(サンプル数)が10数点といった極めて少ないことが特徴である.一方,観測ベクトルの次元は数千から一万超にもなり,状態推定に関して不定となる問題設定が容易におこる.我々は状態変数ベクトルの次元を超低次元とし,実体的意味のなかった状態変数に遺伝子モジュールの概念を付与することで状態空間モデルの有効性を一連の研究により示し続けている.当初は最尤法によりパラメータ推定を行っていたが,モデルを階層化し,さらに正則条件を加えることで,動的なモジュールネットワークの変遷を推定することを可能にした.同様の枠組みを用いた,既に開発済みのクラスタリングの手法をソフト化し,その解説をソフトウェア公開論文としてトップジャーナルに発表した. また,状態空間モデルと,バイオインフォマティクスの分野で活発に研究されているカーネル法を融合する研究も進めた.カーネル法では通常データそのものを入力とする場合が推奨されているが,前処理として状態空間モデルを利用して,一信号をあえて多信号に分解し,それらを入力とするアプローチを採用することの有効性を示せた.また判別においてさまざまカーネルが一般には可能であるが,特にスペクトル判別に注目し,また正定値性が保証されていないKLカーネルをあえて採用することで,微妙なスペクトル判別が精度良くできることを実例を用いながら示した.これらの統合手法の有効性が予想以上のものであることが確認できたため,研究開発した手法の有効性のアピールと拡張性の検討のために必要な器機を導入した.
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