2005 Fiscal Year Annual Research Report
多因子疾患糖尿病のトランスレーショナル研究支援動物実験システム
Project/Area Number |
17200029
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
大西 保行 (財)実験動物中央研究所, バイオメディカル研究部, 室長 (70201382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 晴夫 (財)実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (30353478)
日置 恭司 (財)実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 室長 (80208735)
戸辺 一之 東京大学, 大学院・医学部, 助教授 (30251242)
新井 敏郎 日本獣医大学, 獣医学部, 教授 (70184257)
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Keywords | 糖尿病 / 実験動物 / ノックアウトマウス / IRS-2 / PPAR / 遺伝的背景 / 体外受精 / 自然交配 |
Research Abstract |
今年度は2型糖尿病モデルとしC57BL/6Jを遺伝的背景とするIRS-2(KO/KO)マウスの近交を確立し、体重、耐糖能およびインシュリン抵抗性における週齢および性差の影響を調べた。さらにこの時、肝臓および骨格筋でのグルコースおよび脂肪代謝に関わる酵素の活性についても調べた。その結果、作製当初のC57BL/6J×CBAの交雑系IRS-2(KO/KO)マウスでは生後8週齢から雄のみに耐糖能障害とインシュリン抵抗性が確認されていた。それに対し戻し交配10世代以上に達したB6J-IRS-2(KO/KO)の有用性を検討した結果、IRS-2(KO/KO)マウスは雄雌共に6週齢で耐糖能障害とインシュリン抵抗性を示した。さらに、高トリグリセライド血症を示し、肝臓で脂肪合成に関わる酵素、G6PD、ACL、FASおよびmalic enzymenの活性が野生型に比して極めて高く、脂肪の代謝異常を示唆している。これらはインシュリン分泌不良による日本人・アジア人の病態に類似しており、II型糖尿病のモデルとして有用であると結論した。 また、14および24週齢において一部のオスの血中グルコース濃度が著しく上昇し、1型糖尿病を呈する個体が現れ、短期間での削痩、インシュリンの枯渇、ケトーシスは劇症1型糖尿病に類似していた。以上のことから、B6J-IRS-2(KO/KO)マウスは6週齢で高血糖、高インシュリン血症、インシュリン抵抗性、高中性脂肪血症および高FFA血症を示し、14週齢では重篤となる典型的な2型糖尿病モデルとして有用であった。さらに劇症1型糖尿病の病態モデルに発展する可能性も有することが示された。 NODマウスではIVF-ETによりICRマウスへ胚移植および里子操作を行うと、発症が抑制されるという報告があることから、実験動物における生産方法による表現型の差の有無を把握することは重要であると考え、B6J-IRS-2(KO/KO)マウスにおいても自然交配由来およびIVF-ET由来の表現型の差異について検討した。その結果、IVF-ETによる影響は耐糖能、インシュリン抵抗性および血中アディポネクチン濃度において差がなく、B6J-IRS-2(KO/KO)マウスはIVF-ETによる生産でも安定した表現型を維持できることが示された。 さらに、抗糖尿病因子として注目されているPPARファミリーに注目し、PPARγの中程度抑制およびPPARδの過剰分泌によるIRS-2(KO/KO)マウスおよびob/obマウスへの効果を検討し、PPARファミリーによる糖尿病治療モデルの確立を試みた。現在、他の研究機関との共同研究により作製されたob/ob, PPARγ(KO/+)マウスとob/ob, PPARγ(+/+)の比較を行い、レプチン欠損によるII型糖尿病に対するPPARγ抑制効果の新規経路を生理学的および分子生物学的アプローチにより探索している。現時点では解析中であるが8週齢での体重は有意に低く、PPARγの中程度抑制による脂肪分化が抑制されていることが示された。PPARδについては、脂肪組織および骨格筋で発現するDNAコンストラクションを既に構築し、C57BL/6Jマウスの前核期卵へのマイクロインジェクションを行っている。
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Research Products
(1 results)