Research Abstract |
サブ1(気候シナリオ班)では, 統計的有意性, モデル間整合性, 解釈可能性, 関連プロセスの妥当性などの基準により気候モデルの不確実性が判断できる可能性を示した. サブ2(都市・海岸・防災班)では, 地盤沈下及び海岸侵食が日本, ベトナム, タイの沿岸域の共通した事象であり, 気候変動への脆弱性を一層増大させる要因であるとし, 沿岸域では, モニタリング, 土地利用計画と防護技術等のソフト・ハード対策の組み合わせが必要であることを示した. また, 気候変動に伴う複合的地盤災害に対して有効と思われる基礎的な対応技術・適応技術メニューを整理した. サブ3(農業・食料対応班)では, 最近の九州地方での予想以上のコメの減収について解析を行い, 顕著に収量が減少した1999年と2004年には, 高温と寡照条件が同時に影響したことを明らかにした. また, 中国・内蒙古自治区, 黒竜江省, 雲南省の砂漠化や温暖化影響を調査し, 気候変動下のアジアの持続可能な農村開発のためには, 市場機能の活用や外からの資本や技術の導入, 社会制度改革が必要であるが, 同時に, 地域固有の自然資源や共同体, 伝統的知恵などを活用し, 生態的, 文化的多様性を保全することも重要であることを指摘した. さらに, 共通点が多い日本, 韓国, 中国, 台湾を対象として研究者の連携を図るためのネットワークの構築を図った. サブ4(適応政策班)では, 適応策によるリスク削減便益の計測に焦点を当て, 各分野の適応策の経済評価に関する調査・分析を実施した. 排出シナリオや気候モデルの種類による不確実性を考慮するため, IPCC第4次評価報告書で用いられた約20の気候モデルによる将来気候予測情報を利用できるように影響予測・適応策モジュールを拡張した. それを用いた試算によると, CO_2の施肥効果を考慮しない場合, どの排出シナリオを想定した場合でも, 基準年(1990年代)に対して2080年代には, アジアの広い範囲で米の収量が減少する確率が高いことがわかった. また, 近未来(2020年代)においては, CO_2施肥効果の効果は小さく, 気候変化影響を受けて, 西日本, 中国南部, インドシナ半島, インドにおいて, 米の収量が減少する確率が高いことを示した.
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