2005 Fiscal Year Annual Research Report
p53依存性Sチェックポイントと放射線誘発ゲノム不安定性の分子機構
Project/Area Number |
17201014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗政 明弘 鳥取大学, 医学系研究科, 助教授 (80343276)
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Keywords | p53 / ゲノム不安定性 / 経世代影響 / DNA複製フォーク進行 / PCNA / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
照射精子受精次世代にみられる反復配列の組換え突然変異でみたゲノム不安定性の機序として、p53依存性Sチェックポイントの存在が明らかになり、この新規Sチェックポイントの分子機構についてマウス繊維芽細胞(MEF)を用いて解析した。その結果、正常MEFでは放射線照射によりDNA合成が抑制され、この抑制は複数フォーク進行速度低下と複製開始の抑制よりなることがわかった。ついでp53-/-MEFで同様の実験を行ったところ、2Gy以下の線量でのフォーク進行速度低下がみられなかった。また照射後にみられるPCNAのクロマチンへの結合は2Gy照射したp53-/-細胞ではみられず、線量が5Gyになると野生型細胞と同様の結合が見られた。この結合に際してPCNAがリン酸化されるが、p53-/-ではこれが見られなかった。 p53依存性Sチェックポイントは複製点の進行を制御していることから、複製点での相同組換え頻度についてのp53の関与を姉妹染色分体交換(SCE)を指標に解析したところ、p53-/-細胞において放射線照射によるSCE頻度の上昇が見られなかった。この頻度上昇はATM-/-細胞では認められたことから、p53がATM経路とは独立した機能をもっている可能性が示唆された。 p53依存性Sチェックポイントの機構をタンパク質発現・修飾レベルで明らかにするため、p53依存性、S期依存性、そして放射線照射時に活性化されるATMとの関連という3つの視点からプロテオーム解析手法を用いて研究を行った。p53欠損マウスとその対称となる野生型マウスの胎児線維芽細胞からタンパク質を抽出し、2次元電気泳動(2DE)を用いて比較したところ、p53の有無により発現が変化するスポットをいくつか得ることが出来た。S期依存性については、m5S細胞を用いて細胞周期を同調させ、G1/S期、S期、G2/M期にある細胞を得た。これらから得られたタンパク質を用いて、2DEにて解析を行ったところ細胞周期の進行により発現量の変化するスポットが観察された。ATM依存性という観点からは、放射線照射濃霧に伴う変化を、2DEで解析し、リン酸化タンパク質を特異的に染めるProQ Diamondo染色と、ruby、銀染色で比較検討を行っているが、まだ明らかな差を呈するスポットは得られていない。現在これらスポットを、MALDI/TOF質量分析を用いて解析を進めている。今後これらの変化するタンパク質をさらに精度良く検出していき、解析精度を高めていくことで、p53依存性Sチェックポイントに関与するタンパク質群を同定していく。
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Research Products
(6 results)