2007 Fiscal Year Annual Research Report
p53依存性Sチェックポイントと放射線誘発ゲノム不安定性の分子機構
Project/Area Number |
17201014
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
丹羽 太貫 National Institute of Radiological Sciences, 重粒子医科学センター, 副センター長 (80093293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗政 明弘 鳥取大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (80343276)
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Keywords | p53依存存性Sチェックポイント / 相同組換え突然変異 / 照射精子受精マウス / ミニサテライト配列 / pink-eyed unstable allele / 損傷記憶 |
Research Abstract |
平成14年度採択の基盤研究A「マウス初期胚におけるp53依存性S期抑制と放射線誘発非標的・遅延ゲノム不安定性」において、新規のp53依存性Sチェックポイント機構を発見し、これが期において検知された損傷シグナルを受け、複製フォーク進行速度を低下させることを明らかにした。またこのような機構が照射された精子で受精したマウス1細胞胚において損傷のない雌性核に対しても機能することを明らかにした。平成17年度からは「p53依存性Sチェックポイントと放射線誘発ゲノム不安定性の分子機構」の課題のもとに、p53依存性Sチェックポイントの分子機構をさらに追及し、ついでその生物学的な意味を明らかにする試みを行った。研究の最終年度である本年度では、以下のことが明らかになった。 1.マウス繊維芽細胞において姉妹染色分体交換は、p53依存性であることが明らかになり、p53依存性Sチェックポイントによる複製フォーク進行の抑制が姉妹染色分体間の相同組み換えを誘導することが明らかになった。 2.このp53依存性の相同組換えは、損傷応答として生じるもので、組換え部位にはかならずしもDNA切断などの損傷を必要としない。 3.照射した精子の受精で生まれたマウスに見られるミニサテライト配列やpink-eyed unstable alleleの相同組換え突然変異もp53依存性であることから、従来ゲノム不安定性の指標とされていたこれらの指標の突然変異もこのp53依存性Sチェックポイントの働きによるものであることが示された。 4.さらに照射された精子で受精した12日目のマウス胎児にの繊維芽細胞をしらべると、姉妹染色分体交換の頻度が精子に対する線量依存的に増加していた。 5.以上より、個体発生の初期である受精時のDNA損傷は、長期にわたってその記憶が継続し、p53依存性Sチェックポイントを立ち上げ続けて、姉妹染色分体交換など、間違いのない相同組換え頻度を上昇させることにより、損傷の影響を排除するものと考えられる。
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Research Products
(11 results)