Research Abstract |
これまで,相分離自己組織化法(SaPSeP法)の一連の検討の中で,シード重合過程において乳化剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が存在すると,単中空高分子微粒子のシェル層に一つの開口部が形成され,添加する乳化剤の種類や濃度が開口部の形成に影響を及ぼすことを明らかにしているが,本年度は,SaPSeP法を用いた開口部の生成機構についてより詳細に検討を行うため,懸濁滴に溶解させるポリマーの種類や量,及びモノマーの種類,開始剤濃度が開口部の形成に与える影響について検討した。SaPSeP法において懸濁滴内部で生成したポリジビニルベンゼン(PDVB)の相分離がシェルの形成に大きく関与することから,滴内に予め溶解させるポリスチレン(PS)濃度を変化させ,相分離速度を変化させた。懸濁滴に溶解させるPS濃度を変化させて様々な濃度のSDS水溶液中にて重合を行い,粒子を作製した結果,これまで開口部が観察されなかった系においても,PS濃度を増加させると開口部が形成されることを明らかにした。また,モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)を用いた場合でも同様に開口部を有する中空粒子の合成に成功した。ただ,DVB系では,53mM以上のSDSが必要であったのに対し,非常に低いSDS濃度において,より大きな開口部の形成が観察され,その理由として,EGDM系の方がDVB系よりも,モノマー滴内で生成したポリマーの相分離が早く起こるためであることを見出した。さらに,粒子径の影響を検討した結果,粒子径が大きくなると均質なシェル層が形成されず多孔化する結果が得られた。これは,相分離したPDVBの拡散距離が長くなることによるPDVBの滴/水界面までの拡散/吸着が重要であることを示しており,開口部の形成には滴界面に存在する乳化剤の影響のみならず,相分離したPDVBの滴界面への吸着速度などが重要な因子であることを明らかにすることができ,開口部中空粒子の創製法の確立に大きな知見を得ることができた。
|