2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17203018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 公明 Tohoku University, 大学院・情報科学研究科, 名誉教授 (10007148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 正輝 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30156608)
長谷部 正 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (10125635)
小林 一穂 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (20150253)
照井 伸彦 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50207495)
福山 敬 東北大学, 工学部, 教授 (30273882)
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Keywords | 合理的愚か者 / 生活者 / 幸福度 / 快楽の踏み車仮説 / 協力と連携 / 不平等 / 失業率 / 所得満足度 |
Research Abstract |
本研究課題の中で最も重要なのは、「生活者」の行動原理を定式化することである。それはこれまでの伝統的経済理論が想定する「効用最大化を目指. す合理的愚か者としての消費者」ではなく、人々が互いに連携協力する行動を一つのコアとするモデルとすべきである。本研究では生活者の「幸福」の増進を行動原理とする。自己の所得水準が個人の幸福度に影響を与えることは否定できないが、ある所得水準(約年間2万ドル)を越えると、所得増加は幸福度の増加に結びつかないという、広範に観察される事実を説明するための有力な仮説として、「Hedonic treadmill(快楽の踏み車)」仮説がある。この仮説が日本では成立するかどうかを、内閣府「国民生活に関する世論調査」(1961-2006)のデータを用いて分析を行った。まず幸福度変数が所得満足度変数に回帰されたモデルでは、所得ダミー変数はいずれも正で有意であり、かつ所得満足度が高い順に係数も大きくなっている。つまり、所得満足度が大きいほど幸福度も大きい。次に所得満足度変数が所得水準に回帰されたモデルでは、クラス1(200万円以下)、クラス2(200-500万円)、クラス4(1000万円以上)の所得水準変数の係数はプラスで、クラス2と4の係数は有意である。しかし、クラス3(500-1000万円)の係数はマイナスで有意である。このことはクラス3は "より良い生活をしたい" という欲求水準が現在の所得に比して高く、その結果現在の所得水準に"不満"であると考えられる。つまり、この所得クラスに関しては「Hedonic treadmill」仮説が当てはまると考えられる。 個人が他者の状態に払う関心の強さを分析するために、不平等度と失業率の社会的環境変数を個人の幸福度を説明する変数として付加した。その結果、人々は社会の不平等を嫌い、自分の所得階層での相対的位置に関わらず、不平等度の拡大は不正義と感じることが判明した。また不平等度よりも失業率が人間の幸福により大きな影響を与える。
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Research Products
(26 results)