2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体表面赤外分光を用いた細胞の動的過程の解明と細胞チップへの応用
Project/Area Number |
17206004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
庭野 道夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20134075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康男 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (40312673)
宮崎 均 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (40183636)
礒田 博子 筑波大学, 生命環境科学研究科, 助教授 (00375429)
溝口 剛 筑波大学, 生命環境科学研究科, 講師 (70281623)
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Keywords | 細胞 / 赤外分光 / 表面 / バイオ・チップ / 半導体 / DNA / ハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
本年度は(1)赤外分光法による(1)無洗抗原抗体反応検出技術の開発、(2)マイクロ流路内の生体材料(DNA)の挙動解析及び(3)細胞の赤外分光その場観察装置の開発を行なった。 通常、抗原抗体反応を検出するためには、抗体または抗原への蛍光色素の修飾と洗浄は必須の工程である。本研究では、多重内部反射赤外分光法によってアミドI、アミドII由来の赤外吸収ピークを測定することにより抗原抗体反応の検出を行なった。本手法は、抗体または抗原をその固有の赤外吸収ピークにより検出するため、蛍光色素を一切必要としない。また、溶媒中において多重内部反射配置で測定しているため、半導体(ガリウム砒素)プリズム表面近傍にその感度が集中し、浮遊しているものには感度がなく、抗原抗体反応によりプリズム表面に吸着した抗体または抗原のみを高感度に検出することができる。このため、洗浄することなしに抗原抗体反応を検出することが可能となる。実際に、本年度において抗原抗体反応を蛍光色素を使用せず、また、洗浄なしで抗原抗体反応を検出することに成功した。また、競合実験においてもその優位性が示された。つまり、赤外分光法は、タンパク質の検出において、蛍光色素の吸着や洗浄といった工程を減らすことができ、高速な検出手法である上、その場観察が可能な技術であることを示している。タンパク質のその場観察技術は、細胞の生命活動において放出されるタンパク質の検出等、細胞観察技術へも応用可能である。 赤外分光法を用いたマイクロ流路内の生体材料の挙動解析では、半導体微細加工技術を駆使し、深さ2μm、幅200μmの流路をシリコンプリズム上に作製し、その流路内のDNA分子の挙動を解析した。その結果、電気浸透流ではDNA分子と共に不純物や水和物が泳動するがわかった。つまり、電気浸透流による生体材料の分離にその水和物や不純物が影響を与える可能性があることを示しており、これは、生体材料分離技術の再現性を向上させる上で重要な知見である。この結果は、蛍光色素を用いたような手法ではDNAのみの泳動位置を検出しているので判定できないものであり、赤外分光法を用いることによって明らかになった。また、電気泳動法によりそれらを分離できることも示された。 細胞の赤外分光その場観察装置の開発では、赤外分光器の試料室内で細胞を観察するために、その試料室内を温度37℃、湿度95%以上に維持しながら赤外分光を可能にするための技術開発に着手した。現在、12時間程度、試料室内で生きた細胞を観察することができるようになり、アポトーシス中における細胞のその場観察を行なっている。
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Research Products
(3 results)