Research Abstract |
磁気ディスク記憶装置(ハードディスク)やマイクロ・ナノマシンなど,近年の機械要素の微小化にともなって,1nmオーダの厚さの超薄膜状潤滑膜(ナノ潤滑膜)による潤滑技術の確立が要請されている.この領域では,厚さに比して液体分子の大きさが無視できなくなり,従来の連続流体的な取り扱いが破綻し,バルク潤滑膜とは異なる新たな潤滑理論の構築が必要となるが未だ確立されていない.その最大の障害は,隙間1nmオーダの摺動面間の現象を従来の計測技術ではとらえることが困難な点にある.本研究では,ナノ潤滑膜の潤滑特性計測法を確立し,ナノ潤滑膜による潤滑状態の解明を目的とする.具体的な計測法としては,サブnmオーダの隙間制御とサブnNオーダの高感度力検出が両立でき,かつ摺動時の潤滑膜の動的分布の観測が可能な方法を確立する.測定法開発として,せん断力測定,鉛直力測定,隙間測定,動的膜分布観測,これらに加えて要素技術を統合した装置による潤滑特性測定,の5項目についての研究を進める.本年度は,剪断力測定については高感度化,鉛直力測定についは原理確認,隙間測定については光干渉型測定法の原理確認,動的膜分布観測については膜厚測定法の原理確認,について研究を進めた.特に,剪断力測定について,光学設計を用いてプローブ・ファイバを円筒レンズとしたプローブたわみ測定法の高感度化に成功し,最小検出限界10pnN〜100pNオーダの高感度力検出を実現した.鉛直力測定,動的膜分布における膜厚測定の原理確認にも成功した.今後はこれらの高精度化を図る.さらに隙間測定については,光干渉型測定法においては接触点付近で十分な精度が得られず,次年度は別方法もあわせて検討することとした.
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