2005 Fiscal Year Annual Research Report
ハギア・ソフィア大聖堂の修復史とその評価、および今後の修復・保存に関する研究
Project/Area Number |
17206062
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日高 健一郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (30144215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢田 正昭 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20000490)
吉野 邦彦 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 助教授 (60182804)
渡辺 俊 筑波大学, 大学院システム情報工学研究科, 助教授 (60212320)
高瀬 裕 立命館大学, COE推進機構, 教授 (50388104)
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Keywords | ドーム / ハギア・ソフィア大聖堂 / コンスタンティノポリス / ビザンティン建築 / イスタンブール |
Research Abstract |
現地調査に先立ち、パリ国立図書館ほかで史料調査を行ない、過去の調査に加えて、17世紀以降のモスクとして使われていたハギア・ソフィアに関する画像史料を複写、整理した。 現地調査では、現在博物館として機能している旧大聖堂に関し、博物館機能調査、構造予備調査、側廊およびギャラリー階の実測調査、モザイク壁画の劣化現況調査を実施した。博物館機能調査では、堂内の動線、壁画・モザイク装飾に関する展示技術について観光客の行動追跡調査および照度調査を行なった。堂内では、方向により午前の陽光および午後の鋭い西日が壁面を直射するので、この直射光の制御も博物館機能の視点からは大きな課題である。構造予備調査では、地上階、ギャラリー階、第二コーニス階の現状を再度確認し、次年度の解析計算および振動測定に関する方針を決定した。堂内上部構造の実測は過去の調査ですでに終えているが、今回はこれに続き、極めて複雑な凹凸を持つ側廊ヴォールトおよびギャラリー・ヴォールトの実測をレーザースキャニングを用いて行なった。ヴォールトの南北断面には、目視によってすでに側廊外側へ向かう変形が見られるが、今回のスキャニングでは、この変位が高精度の三次元座標として得られた。データの可視化と解析は現在進行中である。モザイク壁画の劣化現況調査では、金地テッセラを対象として6世紀、10世紀、14世紀の発色性にどのような違いが見られるかを色彩計で測定した。6世紀のテッセラは後補のテッセラに比べて発色が良いが、色彩計のスペクトル分析によれば、これは赤色成分を多く含む結果である。表面の汚れによる発色低下も色彩測定にはっきり表れており、極めて簡単な修復作業としてまず堂内モザイクの表面を洗浄する必要がある。次年度は、保存科学の専門家と共同してレンガや漆喰の劣化、大理石の材種同定と劣化を進めたい。
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