2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17206064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 博太郎 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授 (10024366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 正九 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特任研究員 (70362671)
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Keywords | 金属物性 / 電子顕微鏡 / ナノ粒子 / 相平衡 |
Research Abstract |
理論面では、これまでに本研究代表者らが得ている実験事実に基づいて、微小系の固相合金における特異な相平衡の検討を行なった。具体的には、ナノサイズの固相合金における著しい相互固溶度の増大について理論的に検討を加えた。まず、こうした増大が表面エネルギーの効果や界面エネルギーの効果でどの程度まで説明できるのかを調べた。計算は、ある温度で、α/β2固相共存粒子の自由エネルギーを組成と両相体積分率の関数として求め、その値を単相粒子の自由エネルギーと比較する手法ですすめた。このとき、粒子の形状は球形、界面は平面、をそれぞれ仮定した。その結果、こうした表面エネルギーや界面エネルギーの効果による固溶度増大は、多くても10%未満であることが判明し、実験的に得られている数10%にものぼる大幅な固溶度増大の現象は説明しがたいことが明らかになった。そこで次に、ナノ粒子においてはデバイ温度がバルクに比べて10〜30%も低下することに着目して、ナノ粒子における弾性定数の低下がどの程度固溶度増大に影響するかを調べた。具体的には、正則溶体近似による自由エネルギー計算を行ない、相互作用パラメータの中に弾性歪エネルギーに起因する項を入れた。この計算では、弾性定数がバルクに比べて1/2に減少する範囲までを追跡した。これは、デバイ温度に換算すると、〜30%の低下に相当する。こうした弾性定数の低下にともない、自由エネルギーVS組成曲線のエンタルピー由来分は大きく減少し、従って共通接線で与えられる固溶度は顕著に増大することがわかった。計算結果は、この増大分の程度は温度にもよるが、数10%にのぼりうることを示している。これは実験で観察される増大の程度と矛盾しない。以上の検討結果は、ナノサイズの合金粒子にみられる著しい固溶限の増大は、系のサイズ低下にともなう弾性定数の減少に起因する可能性を示唆している。 実験面では、ナノ粒子の相安定性に及ぼす基板の影響を検討し、基板との化学的相互作用が相安定性の一つの支配因子であることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)