Research Abstract |
1.CLEペプチド類の機能探索 シロイヌナズナの全31種のCLE遺伝子をもとに,26種類のペプチドを予測した。この26種のペプチドを,2個のヒドロキシプロリンを入れて化学合成し,その活性を,道管形成の阻害,シュートの縮小,根の成長阻害について調べた。すると,CLE41/44,CLE42は道管形成を特異的に抑制し,根の成長やシュートの形成には効果がなかった。一方で,CLV3をはじめとするいくつかのCLEペプチドは,シュートの抑制と根の成長抑制にともに効果をもち,CLE17をはじめとするいくつかのペプチドは根の成長のみを阻害した。また,CLEI-CLE7はいずれに対しても活性は持たなかったので,未知の機能があると考えられた。このように,CLEペプチドは一部で機能の重複をもちながら,植物の幹細胞の維持と分化の切り替えに関して,多様な働きをしていると考えられた。 2.新規シグナル因子としての多グルタミン酸結合型葉酸の同定 多グルタミン酸型葉酸のグルタミン酸鎖切断酵素であるGGHの遺伝子発現をin situ hybridizationで調べたところ,茎頂メリステムで強く発現することが明らかとなった。そこで,メリステム形成における多グルタミン酸型葉酸およびGGHの役割を明らかにするために,シロイヌナズナの根とシュートおよび胚軸の培養系を用いて解析を進めた。その結果,葉酸生合成阻害剤添加により根の伸長阻害や茎頂分裂領域の縮小が導かれ,その効果は多グルタミン酸鎖型葉酸の添加により回復した。一方,単グルタミン酸鎖型葉酸添加によっては回復することが出来なかった。また,培養系を用いた解析から,通常の分裂には葉酸は必ずしも必要でないが,メリステム形成には必要であることが明らかになった。これらの結果を総合して,多グルタミン酸鎖型葉酸は幹細胞の未分化状態の維持に働いているという仮説を提案した。
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