Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
縄田 栄治 京都大学, 農学研究科, 教授 (30144348)
田中 樹 京都大学, 地球環境学, 准教授 (10231408)
舟川 晋也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20244577)
矢内 純太 京都府立大学, 農学研究科, 准教授 (00273491)
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Research Abstract |
湿潤熱帯において適用可能な土壌有機物動態モデルの構築を目的として,日本,インドネシア,タイ,タンザニアの4地域において,土壌有機物動態の実測ならびに採取土壌を用いた有機物分解特性の解析を行い以下の結果を得た。1)強酸性の森林土壌においては,年間有機物回転量の約10%相当量が,水溶性有機物(DOM)として土壌断面中を流下することが明らかとなった。2)堆積腐植層の酵素活性を評価した結果,中〜高pH条件下では有機物を無機化するマンガンペルオキシダーゼ活性が高いのに対し,低pH条件ではDOMの生成をもたらすリグニンペルオキシダーゼの働きが卓越することがわかった。これは,森林土壌生態系におけるDOMの動態に対し,糸状菌酵素活性の違いが直接影響を及ぼすことを示している。3)タンザニアの実験圃場にて作物栽培実験を行い,作物/土壌/微生物中の炭素・窒素動態を解析した結果,土壌微生物は,乾季中は養分シンクとして,雨季中は養分ソースおよび有機物の分解者として,土壌-作物間の有機物/窒素動態に寄与することが明らかとなった。 本研究を通して以上のような成果が得られた反面,既存モデルの改良というアプローチの限界も明らかとなった。1)従来のモデルの構造では,その検証が,土壌有機物総量の変動を通してしかなされ得ない。2)湿潤熱帯では,土壌酸性等微生物活性を制限する複数のストレス要因の影響が大きいため,分解速度定数を環境要因の変数として可変とする必要がある。このような問題点を克服するためには,増減を記述する土壌有機物画分として実測可能なものを組み込むとともに,土壌微生物活性をかなり斉一的なものと捉える従来のアプローチを改め,環境要因の変数とする必要がある。
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