Research Abstract |
昨年に引き続き,緑膿菌のオートインデューサー(アシルホモセリンラクトン)の類似化合物がPorphyromonas gingivalisのバイオフィルム形成を阻害するか否かのスクリーニングを行った。新規に合成したオートインデューサーの類似化合物6種類を加えた計19種のサンプルをP.gingivalis培養液中に各々混和した後,Modified Robbins device内に装着したヒドロキシアパタイトディスク上にバイオフィルムを形成させ,バイオフィルム細菌を定量的および微細形態学的に検索した。調べた19種類中,C_<16>H_<32>N_2OとC_<19>H_<29>NO_3の2種類の化合物は,P.gingivalisのバイオフィルム形成に対しアンタゴニスト様に作用した。さらに,1)P.gingivalisと赤血球との凝集活性,2)上皮細胞およびKgpやRgp活性,3)P.gingivalisとコラーゲン,ラミニンあるいはフィブロネクチンへの付着,に対する19種の化合物の影響についてそれぞれ検索した。19種の化合物は全て,P.gingivalis菌体と赤血球との凝集活性およびコラーゲン,ラミニン,フィブロネクチンへの付着には影響を及ぼさなかった。しかしながら,C_<16>H_<32>N_2OとC_<19>H_<29>NO_3は,100μMでは赤血球や上皮細胞に対する細胞毒性が認められた。また,これら2種の化合物は,100μMで24時間作用させるとKgpおよびRgp活性を低下させた。現在,研究分担者の菅らが合成した,植物の病原細菌のクオラムセンシングに対し強力なアンタゴニストとして作用するC_<11>H_<14>N_2O_3がP.gingivalisのバイオフィルム形成に及ぼす影響を検索中である。 歯周病関連細菌の一種であるEikenella corrodensのオートインデューサーの産生に関与するLuxS遺伝子をノックアウトした菌株を,E.corrodens 1073株を用いて作製した。E.corrodens LuxS欠損株と親株とのバイオフィルム形成能を静置系とフローセル系で比較検討したところ,静置系では,欠損株は親株より約1.3倍形成量が増加したが,フローセル系では欠損株のバイオフィルム形成量は有意に低下し,バイオフィルム内の細菌細胞が空疎であることを3次元的に明らかにした。。E.corrodensでは,成熟したバイオフィルムの形成には,LuxSだけでなく他の遺伝子が複雑に関与している可能性が示唆された。
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