Research Abstract |
昨年に引き続き,緑膿菌のオートインデューサー(アシルホモセリンラクトン:AHL)の類似化合物がPorphyromonas gingivalisのバイオフィルム形成に及ぼす影響を検討した。新規に合成したオートインデューサーの類似化合物6種類を加えた計20種のサンプルをP.gingivalis培養液中に各々混和した後,Modified Robbins deviceを用いてヒドロキシアパタイトディスク上にバイオフィルムを形成させ,バイオフィルム細菌を定量的および共焦点レーザー顕微鏡にて3次元的に検索した。20種類中,C_<16>H_<32>N_2O,C_<19>H_<29>NO_3ならびにC_<11>H_<14>N_2O_3の3種類の化合物は,P.gingivalisのバイオフィルム形成に対しアンタゴニスト様に作用した。20種類の化合物中9種類では,対照群と比較して,バイオフィルム形成量が有意に増加した。アンタゴニスト様効果を示した3種の化合物作用群では,バイオフィルムの厚みが顕著に薄く,フィルムの形成領域は狭かった。さらに,1)P.gingivalisと赤血球との凝集活性,2)上皮細胞およびKgpやRgp活性,3)P.gingivalisと細胞外マトリックスであるコラーゲン,ラミニンあるいはフィブロネクチンへの付着,に対する20種の化合物の影響についてそれぞれ検索した。20種の化合物は全で,P.gingivalis菌体と赤血球との凝集活性およびコラーゲン,ラミニン,フィブロネクチンへの付着には影響を及ぼさなかった。しかしながら,C_<16>H_<32>N_2OとC_<19>H_<29>NO_3は,100μMでは赤血球や上皮細胞に対する細胞毒性が認められた。3種のアンタゴニスト様化合物は,100μMで24時間作用させるとKgpおよびRgp活性を低下させ,P.gingivalisの病原性にも影響を及ぼすことが明らかとなった。一方,レポーターアッセイ法の結果よりP.gingivalisはAHLを産生していなかったことから,P.gingivalisはAHLに対するレセプターを保有し,供試したAHL類似化合物に反応してバイオフィルム形成が影響を受けたと推察された。
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