2007 Fiscal Year Annual Research Report
東部および南部アフリカにおける自由化とエスノナショナリズムの波及
Project/Area Number |
17251012
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
中林 伸浩 Kanagawa University, 人間科学部, 非常勤講師 (30019848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松園 万亀雄 神奈川大学, 国立民族学博物館, 館長 (00061408)
小馬 徹 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (40145347)
小田 亮 成城大学, 文芸学部, 教授 (50214143)
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Keywords | エスノナショナリズム / 民族性 / ナショナリズム / アフリカ / 自由化 / 国民国家 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、エスノナショナリズムの現代的表現の調査、研究に従事した。2007年12月のケニア、2008年3月のジンバブエの両方における大統領選の混乱は、独立後半世紀になろうとするアフリカの国民国家の前提が崩れていることを示した。そのすくなくともひとつの原因は、国民国家としての統合の不調、その結果としてのいわゆるトライバリズムの噴出がある。しかしこの個別見族主義の現れも単純ではない。東ヨーロッパのエスノナショナリズムは、民族の政治的独立、すなわち自らの国家を持つことを主張するが、アフリカのそれは一般に国家内での自民族の地位の向上を主張するものである。 そのなかでも典型的なのは、植民地以前から存在したとされる文化的諸要素を称揚しようというものである。この背景には国民国家化で失われた民族的なアイデンティティの回復があり、近代化による道徳的退廃への憂いがある。ウガンダにおける「文化的リーダー」制などはその進んだ形である。また南アにおける「レインボー」とよぶ多文化主義にもあらわれている、アフリカ的なマルチカルチュラリズムともいえるだろう。他方、エリート的な国民文化主義に反発するポピュリズム的運動もある。これには宗教的なもの(独立的な教会運動)や言語的なもの(ケニアのシェン語)など、一見超民族的であるが、実際には地方的で、民族的で、階層的な背景がある。さらに、目立たないものとして、ローカルな自助運動がある。これはNGOとして組織されている女性自助グループ、青年組織などが典型的である。海外などからの資金の援助があるが、「市民主義」的であると同時に、民族的なものである。 われわれのグループの調査はこれで終了するが、現代アフリカにおける民族性の新たな出現をいくらかでも明らかにできたと考える。
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Research Products
(4 results)