Research Abstract |
【現地調査】 平成19年7月〜11月に,オーストラリア・ダーウィンにおいてハイガシラゴウシュウマルハシの協同繁殖に関する研究を行った。昨年度までの研究実績を継承し,対象種の社会構成,繁殖生態,行動生態に関するデータ,および性判定,遺伝解析のための血液標本の収集および採取を行った。採取した血液標本については,DNA性判定を北九州市自然史博物館の協力の基で行い,マイクロサテライトを用いた血縁解析を九州大学で行った。 本年度は昨年度に続く干ばつのために,昨年度確認した19グループ中6グループが消失し,繁殖成績も極端に悪かった(2グループのみで巣立ち成功)。14グループについて,群れ構成,個体数を確認し,うち12グループの25巣においてビデオ撮影により,繁殖,給餌活動のデータを収集した。ヘルパーのいないグループほどグループの維持が困難で消失しやすいこと,繁殖開始が遅く,繁殖成功が低いことが明らかになった。 【性判定・血縁解析】 2005年度までに採取した血液サンプルについて,マイクロサテライト分析を行い,グループメンバー間の血縁度解析を行い,以下のことが明らかになった. 1)第一メス以外のグループ内の若いメスが繁殖することが確認された。 2)オスでは非血縁ヘルパーはいなかったが,メスではグループ内に亜成鳥・成鳥の非血縁ヘルパーがいることがわかった。 3)雌雄ともに,若鳥ヘルパーの給餌頻度はヒナとの血縁度と無関係であったが,オスの亜成鳥と成鳥のヘルパーはヒナとの血縁が近い時によく給餌し,一方,メスの亜成鳥と成鳥ヘルパーでは,非血縁なメスほどよく給餌をした. これらの結果から,オスの亜成鳥,成鳥ヘルパーは,ヘルピングによる間接的利益を得ているが,メスの亜成鳥,成鳥ヘルパーは,間接的利益より繁殖オスに対する給餌能力誇示の意味合いが強いことを示唆している.
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