2006 Fiscal Year Annual Research Report
内的表象の操作に関する比較認知科学的・比較発達学的研究
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17300085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 和生 京都大学, 文学研究科, 教授 (80183101)
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Keywords | 表象操作 / 思考 / メタ認知 / 記憶 / 感情 / 霊長類 / 鳥類 / イヌ |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、多様な動物種の多様な表象操作過程を分析し、比較することを通じて、この認知機能の進化のプロセスを明らかにすることである。平成18年度の主な成果は以下の通り。()内は共同研究者名。1)フサオマキザルのメタ記憶過程の分析を継続し、彼らは自身の記憶痕跡の強さを認識できるが、記憶の内容についてはメタ認知できないかもしれないという実験結果を得た。2)ハトの錯視知覚の分析を継続する一方、ニワトリの錯視知覚を分析し、ハトと比較した。実験は未完であるが、ニワトリはハト同様に、エビングハウス錯視で、ヒトと全く逆の錯視を経験することがわかった(中村ら)。3)ハトの計画的行動を分析した。コンピュータ上の迷路課題を解かせ、ゴールの位置を突然変化させる実験から、ハトは課題遂行途上のみならず、課題遂行開始前に計画を立てているらしいことがわかった(宮田)。4)フサオマキザルにおける同種他個体の情動状態の認知を分析した。他者が正の情動を示すときと負の情動を示すときでは、その原因と推測される隠された物体への働きかけに差が見られることがわかった(森本)。5)フサオマキザルは、低順位の他個体に対して、「思いやり」とも取れるような食物分配をおこなう場合があることを示した(瀧本ら)。6)フサオマキザルは実験者の持つ報酬を要求することはできるが、他の場所にある報酬に対して人の注意を向けることは難しいことがわかった。チンパンジーでは弱いながらもそれが可能であった(服部ら)。5)フサオマキザルの食物分配行動は、他個体が直前に食べるところを見たか否かで変化し、自身が知っている他者の動機づけ状態に応じた柔軟な分配行動の調整が見られることを示した(服部ら)。7)ギニアヒヒの絵画的奥行き知覚過程を分析し、肯定的な結果を得た(酒井ら)。8)イヌがヒトの感情状態を認知できるか調べ、弱いながらも肯定的な結果を得た(森崎ら)。9)食物の在りかに対するエピソード的記憶を分析し、肯定的な結果を得た(古見ら)。10)イヌは、音から見えない物体を推理できることを示した(寺岡ら)。
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Research Products
(20 results)