Research Abstract |
本研究では,計測原理として,血圧計測には申請者らの考案による容積補償法,心拍出量計測には,申請者ら考案の電気的アドミタンス法を用いることにより,非侵襲的に一心拍毎の血圧・心拍出量を含む循環動態計測が可能となる多用途無拘束(携帯型)循環動態連続計測・自律神経活動解析システムを用いて,健常者や院内外の患者を対象にシステムを運用し,ストレス負荷時や動揺病(乗り物酔い・映像酔いなど)発症時および発症過程の循環動態反応を調べることにより,各種ストレスや動揺病の状態を定量的に判断できる簡便なシステムの構築を目的としている. 本年度は,上記目的の達成に向けて,(1)ストレス負荷のための映像提示および電気刺激を与えることが可能な環境制御シミュレータの開発,ならびに,(2)血圧・心拍出量といった循環動態パラメータ,およびそれらパラメータに基づく自律神経活動解析(循環調節機能計測・解析システム)や脳波・筋電の表示・解析システムの構築を行い,(3)健常成人に対して,特に自動車のドライバーを想定し,環境制御シミュレータを用いた長時間の運転(単純作業・映像提示)を行うことによる疲労や生理活性度(正常・眠気・ぼんやり感など)の変化を循環調節機能計測・解析システムを用いて定量化する手法の開発行った. 結果として,非侵襲的に一心拍毎の血圧変動を連続計測することにより,実験中に外部から任意のタイミングで軽度な電気刺激を与えた後に得られる血圧応答パターンを用いて,活性度を5段階階(2相性(高活性状態):2段階,単相性(低活性状態):2段階,無反応)に有意に分類可能であることを確認した.ここで2相性とは,電気刺激後に,刺激前の血圧値に対して,血圧の大きな上昇・下降が現れ,後に基(刺激前)の血圧値に戻る反応を指し,単相性とは,血圧の上昇が確認された後に基の血圧値に戻る反応を指している.通常,血圧は外部からの刺激に対して上昇し,それを抑える目的で,迷走神経活動が向上し,血圧を大きく下げる反応を引き起こすが,単相性の血圧応答の場合,これら一連の自律神経活動が適切に行われていないことが判断され,そのことからも血圧応答パターンが自律神経活動の活性度を反映していると判断される.今後,循環制御シミュレータおよび循環調節機能計測・解析システムを用いて様々なストレスや動揺病の状態を定量化し,それらを改善する手法の開発および評価を行っていく予定である.
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