2007 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷におけるオリゴデンドロサイトの細胞死メカニズムの解明と組織修復の試み
Project/Area Number |
17300190
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Research Institution | Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
緒方 徹 Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities, 運動機能系障害研究部, 主任研究官 (00392192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星川 慎弥 国立身体障害者リハビリテーションセンター(研究所), 運動機能系障害研究部, 研究員 (60455376)
赤居 正美 国立身体障害者リハビリテーションセンター(研究所), 運動機能系障害研究部, 部長 (80143452)
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Keywords | 脊髄損傷 / アポトーシス / 細胞内シグナル / グリア細胞 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
前年度までの実験から脊髄損傷におけるオリゴデンドロサイト細胞死の誘導因子としてインターフェロンγがその主たるサイトカインとして候補に挙がっていた。 最終年度の本年度はまず、このサイトカインの発現を損傷脊髄において確認した。定量RT-PCRによりインターフェロンγは亜急性期の脊髄損傷において発現していることが確認された。このサイトカインによるオリゴデンドロサイトの細胞死を抑制するために抗アポトーシス遺伝子の損傷脊髄への導入を試みたが、レトロウィルスを用いた実験では目的の細胞への遺伝子導入は不十分であり、解析できなかった。そこで、細胞死を抑制する方法として、インターフェロンγに対する受容体を欠損したマウス(IFNgR(-/-))の使用を試みた。このIFNgR(-/-)マウスに対し、中等度の脊髄圧挫モデルを作成しその組織評価と運動機能評価を行った。脊髄内でインターフェロンγによって細胞死に陥ると予想されるオリゴデンドロサイト前駆細胞は損傷後BrdUを腹腔投与することでラベルし、免疫染色の際細胞種のマーカーであるOlig2とBrdUの二重染色によって同定した。その結果、IFNgR(-/-)マウスにおいては野生型マウスに比べ損傷後1週間の時点で観察されるオリゴデンドロサイト前駆細胞の数が有意に多いことが明らかとなった。このことはオリゴデンドロサイトがインターフェロンγの受容体を持たないため、その細胞死誘導作用から逃れ生存したことによるものと考えられた。さらに、運動機能評価を行ったところIFNgR(-/-)マウスの脊髄損傷後の後肢歩行能力は野生型マウスのものと比較して有意に改善していることが明らかとなった。運動機能の改善はオリゴデンドロサイト前駆細胞の残存のみならず、インターフェロンγの伝達経路が全般的に遮断されているための免疫反応の変化も一因となっていると考えられた。 研究期間を通じて、脊髄損傷に於けるオリゴデンドロサイト細胞死の抑制手段としてインターフェロンγをターゲットとする治療戦略が示唆される結果となった。
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