Research Abstract |
平成17年度は,以下の4点について研究を進めた。 1.天然繊維資源の系統分類学的抽出:天然繊維資源として未開発な素材を網羅的に探索するため,植物群,獣毛動物群,絹糸昆虫群を対象に,系統分類学的な検討を行った。その結果,現在,天然繊維材料として認知されている48種類に対して,学名により同じ「種」として構成されている資源として298種類を抽出することができた。 2.繭糸の形態的特徴の評価:絹繊維として用いられる家蚕糸とは異なり,独特の形質を持つ野蚕糸に注目し,その形態的特徴の評価法の構築を行った。繭糸繊度の評価法として時変パラメータ自己回帰モデルを用いたモデル化を進め,蚕品種によって特徴的な繭糸繊度曲線の特性を数個のパラメータで表現・再現する方法を構築した。また繭糸断面の形状特性についても,顕微鏡写真から画像解析により断面形態を抽出し,断面積,扁平度,形状パラメータ等からその特徴を抽出する方法を構築し,中国,タイ等で採取した野蚕品種,家蚕品種を対象に評価し,多変量解析による特性分類を行った。 3.天然繊維資源データベースの構築:PHPとMySQLの技術を用いて,天然繊維資源データベースの構築を進めた。具体的なフィールドとしては,国・地域情報(人口,気候,主要繊維生産量,農業生産量など),繊維分類データ,繊維形態データ,繊維物性データ等である。今後,この枠組みに具体的なデータを入力し,活用可能なデータベースを確立する。 4.シルクの適正加工・品質評価に関する検討:雑多な天然繊維を工業化し,生産・品質評価するための手法も重要となる。ここではまずシルクを取り上げ,生産条件の最適化手法,および糸むら検査手法についていくつかの検討を行った。その結果,煮繭温度条件を最適化するための計測装置の開発,および数理モデルを用いた糸むらの客観的評価手法を提案した。
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