Research Abstract |
周氷河環境では,地球温暖化により,永久凍土の融解や季節凍土の縮小が起こり,その結果として地盤の不安定化や地表環境(水文,植生等)の変動が予測される.本研究では,国際永久凍土学会の「周氷河地形プロセスと気候変動」研究グループで推進する「周氷河地形変動の地球規模の観測網の設立」計画に向けて,モデル実験地の設立,観測手法の統一化,観測網の拡大を行い,最終的に周氷河地形変動のモデル化を推進することを目的とする. 今年度は,北極圏スバルバール諸島にモデル観測地を設置し,最新の観測技術を結集して,各周氷河プロセスの観測を実施し,観測技術を標準化することに照準を定めた.対象とする地形プロセスは,岩壁での凍結破砕と落石,崖錐斜面での永久凍土の変形,土質斜面での凍上とソリフラクション,平坦地での熱収縮クラックと活動層変形である.海外研究協力者との情報交換によって,各プロセス(地形変化)とその支配要素(気候・水文条件)を通年で自動的に観測するシステムを組み立て,現地に設置した.同一観測要素に対し,より精度が高いが高価な装置と精度は低いが安価で汎用性の高い装置を併用・比較することにより,観測システムの選択ができるように配慮した.夏期の2週間の観測により,安価なシステムでも検定がなされるならば,十分な精度のデータが得られることがわかった.また,現地在住の研究協力者により,システムは順調に作動していることが確認された. 次年度以降は,観測システムに改良を加え,より汎用性を高める.そして,2007年の国際極年に,各国の凍土・周氷河研究者により提唱されている研究計画を通じて,世界の周氷河環境に広域的な観測網を展開することをめざす.
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