Research Abstract |
周氷河環境では,地球温暖化により,永久凍土の融解や季節凍土の縮小が起こり,その結果とし地盤の不安定化や地表環境(水文,植生等)の変動が予測される.本研究では,国際永久凍上学会の「周氷河地形プロセスと気候変動」研究グループで推進する「周氷河地形変動の地球規模の観測鎖の設立」計画に向けて,モデル実験地の設立,観測手法の統一化,観測鎖の拡大を行い,最終的に周氷河地形変動のモデル化を推進することを目的とする. 今年度は,第一に,平成17年度に北極圏スバルバール諸島に設置した周氷河プロセスのモデル観測地からのデータ回収を実施するとともに,観測機器の点検と更新を行った.通年の自動観測により,岩壁での凍結破砕,崖錐斜面での永久凍土の変形,土質斜面での凍上とソリフラクション,平坦地での熱収縮クラックに関する連続データを取得した.測器はおおむね順調に作動したが,岩盤水分や熱収縮クラック測定に関して,さらに改良を加えた.また,精度が高いが高価な装置と精度は低いが汎用性の高い装置の併用・比較することにより,汎用性の高い観測システムの精度や適用限界が明らかになってきた.第二に,同地域で夏期に電気探査と電磁波探査による地盤の内部構造解析を集中的に実施し,自動観測で判明した地盤の活動層厚や含水・含氷率の垂直分布を,広範囲で三次元的に把握することを試みた.第三に,観測・調査鎖を中緯度高山地域に拡大するために,スイスアルプスとチベット高原でも同様な調査・観測を実施した. 最終年度となる平成19年度は国際極年の初年度にあたる.そこで,各国で提唱されている研究計画を通じて,汎用性を高めた観測システムを世界の凍土・周氷河研究者に紹介し,世界の周氷河環境に広域的な観側鎖を展開することをめざす.
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