Research Abstract |
周氷河環境では,地球温暖化により,永久凍土の融解や季節凍土の縮小が起こり,その結果とし地盤の不安定化や地表環境(水文,植生等)の変動が予測される.本研究では,国際永久凍土学会の「周氷河地形プロセスと気候変動」研究グループで推進する「周氷河地形変動の地球規模の観測網の設立」計画に向けて,モデル実験地の設立,観測手法の統一化,観測網の拡大を行い,最終的に周氷河地形変動のモデル化を推進した. 今年度は,第一に,平成17〜18年度に北極圏スバルバール諸島ロングイヤーベン地区(内陸部)に設置した周氷河プロセスのモデル観測地からの自動観測データを回収し,岩壁での凍結破砕,崖錐斜面での永久凍土の変形,土質斜面での凍上・ソリフラクション,低湿地での凍上と熱収縮クラックの発生時期・規模・要因について分析した.測器は順調に作動し,標準的な観測手法が確立した.また,環境の異なるカップリンネ地区(海岸部)で同様の周氷河プロセスの観測を開始レた.このデータ回収は来年度になるが,データの比較により,モデルの精度向上が期待される. 第二に,上記2地域で電磁波探査を集中的に実施し,地盤の内部構造,活動層厚,含氷・含水率を三次元的に把握した.その結果を自動観測データと比較して,周氷河プロセスの時・空間的変化について分析した. 第三に,中緯度高山地域(スイスアルプス・日本アルプス)に展開した観測網からも,凍結破砕,永久凍土変形,凍上・ソリフラクションのデータを回収し,高緯度モデルと高山モデルを合体して,地球全体に適用可能な周氷河プロセスのモデル化を推進した. 第四に,観測ができない過去の周氷河プロセスに関して,凍結融解による地層変形プロセスを室内で再現し,形成時の環境条件を分析した.
|