2006 Fiscal Year Annual Research Report
年輪セルロースの酸素・水素同位体比による降水同位体比の広域マッピング法の確立
Project/Area Number |
17310001
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
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Keywords | 樹木年輪 / 降水同位体比 / 酸素同位体比 / 水素同位体比 / 水循環 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究では、地球上の陸面に普遍的に分布する樹木の年輪に含まれるセルロースの同位体比、特にその酸素・水素同位体比の情報に着目し、過去数百〜数千年間に亘る世界各所における気候変動、特に降水過程など水循環の変動を、高い時間・空間分解能で明らかにする方法論の確立を目指している。 樹木年輪は、一般に、古気候情報を年単位の解像度で復元できる媒体であるが、通常、復元の対象は樹木が成長する夏季の気候に限られている。しかし、ロシア・カムチャッカ半島のような積雪地域の土壌中では融雪水が夏季まで残存していることに着目し、年輪の酸素・水素同位体比(δ^<18>O及びδD)から、積雪(冬季の降水)の同位体比を介して冬季の気候情報を復元することを試みた。その結果、カムチャッカの中央低地では、年輪のd-excess値(δD-8xδ^<18>O)が、2,3月の気温と強い負の相関を示すことが分かり、このd-excess値の経年変化から、過去150年間においてカムチャッカ半島の冬季気温がグローバルな地球温暖化と同調して増大してきたことが明らかとなった。 一方、日本のような高温多湿の地域では、元来、気温や降水量が樹木成長の制限因子になることは少なく、年輪幅の計測による古気候学の研究は、ほとんど行われて来ていない。本研究では、年輪セルロースの酸素同位体比が夏季の相対湿度の極めて精度の高い指標になることに着目し、長野県南部のヒノキ試料を用いて、過去250年間の相対湿度の復元を試みた。復元した江戸時代後期における夏季相対湿度の年々変動は、大阪の古日記記録から解析された梅雨期の降水量変動と極めて良い一致を示し、高齢木や埋没木、考古学試料などを組み合わせることで、過去数百〜数千年間に亘る年輪セルロースの酸素(水素)同位体比からの日本の水循環変動の復元が、実際に可能であることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)