2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧酸素化現象および赤潮が発生する有明海奥部の海洋構造の特性と干潟生態系衰退の原因
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17310012
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
堤 裕昭 Prefectural University of Kumamoto, 環境共生学部, 教授 (50197737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 亮太 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40316188)
古賀 実 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40131916)
門谷 茂 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 教授 (30136288)
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Keywords | 有明海 / 赤潮 / 貧酸素水 |
Research Abstract |
2005年4月より継続している有明海中央部〜奥部海域を縦断する9調査地点における水質調査を、2007年度も4月〜12月に毎月1〜2回行った。また、合わせて海底環境および底生生物群集の定量調査を、有明海最奥部の4調査地点で行った。梅雨明け後の7月〜8月の小潮時には、奥部海域で貧酸素水が発生し、年々大規模化する傾向が見られる。2007年は、8月のはじめに台風が接近して強風と雨をもたらしたため、2006年のように30℃を超える表層水温の上昇は見られず、梅雨期に増殖した珪藻類が水温の極度の上昇で死滅する現象は発生しなかった。しかしながら、すでに海底に大量の有機物が堆積し、有機物含量が上昇したままとなっているので、その有機物の分解が促進され、最奥部海域の4地点(水深10〜15m、直線距離で約14km)でDOが0.3〜2mg/Lの貧酸素水が発生した。底生生物群集は、夏季の貧酸素水発生のたびに密度および湿重量が著しく減少し、冬季には一時的に回復する季節的なサイクルを繰り返しているが、年々、その回復が悪くなり、スピオ科の小型多毛類およびシズクガイ、チヨノハナガイなどの環境変動に適応性の高い小型の二枚貝類しか生息できない状況となっている。そのため、この数年の底生生物群集の衰退は著しく、この海域では底生生物に依存した食物連鎖が崩壊しつつある。このような貧酸素水発生の原因となる底質の有機物含量の増加要因として、底質中の有機物の成分分析より、植物プランクトン由来の有機物の堆積が挙げられる。奥部海域では、毎年、梅雨期と秋季に赤潮が発生しているが、梅雨期には大雨で塩分成層が発達するので、底層まで沈降した懸濁粒子量には大きな増加が認められない。一方、秋季の赤潮の場合、発生した赤潮の規模が梅雨期よりも小さいにもかかわらず、塩分成層が弱いため、底層の懸濁粒子量は梅雨期をはるかに上回ることがわかった。
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Research Products
(8 results)