2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規有害化学物質「合成香料」によるヒトおよび生態系の汚染とリスク評価に関する研究
Project/Area Number |
17310038
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
實政 勲 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60040119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 晴彦 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (60311875)
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Keywords | 合成香料(HHCB) / 大気 / 海水 / 有明海 / 人体 / 脂肪組織 |
Research Abstract |
はじめに 過去2年間の調査により、合成香料のHHCB,AHTNによる「生物濃縮の態様」、「経年変動」、「地球規模の移動拡散性」、「アジア域の汚染実態」が明らかになった。今年度は、環境中での人工香料の生物濃縮係数と移動拡散量を調べるため、有明海の海水と大気試料の分析を行った。また、熊本市内からヒトの脂肪試料を入手して分析を行い、合成香料による人体汚染の実態と影響について調査を行った。 試料と方法 2007年7月〜9月(夏季)と同年11月〜2008年1月(冬季)の2回に、有明海の湾奥・湾央・湾口部より海水を採集した。また、2007年12月に有明海中央部より大気試料を採集した。また、2007年3月〜5月に熊本大学医学部より提供されたヒト脂肪(3試料)を入手した。ヒト試料の採集は、学内の倫理委員会の承認と提供者の同意を得て行った。分析法は既報に従った。 結果と考察 分析を行った全ての海水および大気試料から人工香料のHHCBが検出された。海水の平均濃度は0.61ng/Lであり、有明海の値はドイツ沿岸の北海(1.03ng/L、n=6)6の値と同等であったが、米国ミシガン湖の湖水(4.7ng/L、n=13)7や日本の都市圏の河川水(80ng/L、n=5)8の濃度よりも低値を示した。類似の傾向は大気試料でも観察され、このことは人間活動が活発な大都市との距離が香料の汚染状況に影響する可能性を示している。 HHCBの大気-海水間の移動量(フラックス)を見積もったところ、F=-15.1ng/m2/dayが得られ負の値を示した。このことは、12月の有明海はHHCBが大気から海水に移行している、つまり香料の「たまり場」であることを示している。また、F値:と有明海の水域面積(1,700km2)から、本海域には一日当たり約25gのHHCBが沈降し、さらに海水のHHCB濃度と有明海の容積(34km3)から、海水中に約18.5kgのHHCBが存在すると試箪された。また、有明海の魚類におけるHHCBの生物濃縮係数は2,000〜5,000であり、室内実験での値(1,500)より高値を示した。 熊本県内の人体脂肪組織からHHCBとAHTNが検出された。日本人から合成香料が検出されたのは今回が初めてである。日本人のHHCB濃度は数10ppb鮨肪重当たり)で、米国人のそれとほぼ同程度であった。HHCBには薬物代謝酵素系の誘導や阻害、内分泌撹乱性があるとの指摘もあり、現在の汚染レベルが具体的にどのような影響を与える可能性があるか、今後より詳細な調査研究
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Research Products
(5 results)