2008 Fiscal Year Annual Research Report
大気浮遊微小粒子およびその主要成分の生体影響メカニズムとリスク評価
Project/Area Number |
17310039
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
八木 孝司 Osaka Prefecture University, 産学官連携機構, 教授 (80182301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝畑 朗 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80090439)
川西 優喜 大阪府立大学, 産学官連携機構, 助教 (70332963)
中山 亜紀 京都大学, 工学研究科, 助教 (10335200)
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Keywords | 発がん性 / 変異原性 / 芳香族炭化水素 / PM2.5 / リスク |
Research Abstract |
大気中に浮遊する微小粒子(PM2.5)の主たる起源はディーゼル車排ガスであり、その主成分は多環芳香族炭化水素である。平成20年度は、その中でも3-ニトロベンズアントロン(3-NBA)と4-アミノビフェニル(4-ABP)に着目し、これらが1分子付加したプラスミドを細胞に導入して、分子レベルでの研究を進めた。その結果以下のことがわかった。 3-NBAは主にDNAのグアニン塩基と付加体を形成し、それがG→Tのトランスバージョンをひきおこす。(2)これらの付加体はNERにより修復される。(3)形成する付加体によってDNA複製効率が異なる。(4)グアニン付加体のうち、dG-N^2-ABAが突然変異に対する寄与度の高い付加体である。(5)dG-/N^2-ABAは大腸菌ではDNAポリメラーゼIV,VでTLSされる。 4-ABPがプラスミドのp53遺伝子コドン248配列のグアニンにある場合、TLS率は36%であり、強いDNA合成阻害が見られた。TLSされたプラスミドのうち4%に変異を生じていた。変異のパターンはG→Tが最も多く見られた。 一方、コドン249配列のグアニンにある場合、TLS率は77%であり、強いDNA合成阻害は見られなかった。また、変異誘発も1%と低くなることがわかった。このようにdG-ABPのTLSは周辺配列に大きく影響を受けることがわかった。このように大気浮遊粒子の発がん機構、すなわち癌のDNAにおけるDNA損傷の痕跡の生じる機構の原因を示すことができた。
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