Research Abstract |
本研究は,金属ナノ接点における電流誘起破断の研究を深化発展させ,その成果を電流誘起破断を利用したナノギャップ電極作製に応用することを目的としている.平成17年度は,種々の金属ナノ接点が破断する臨界電流密度の測定およびMCBJ(機械制御破断接合)を用いた種々の実験を行い.以下の成果を得た. 1.高融点のPt,Moおよび低融点のAl,Znのナノ接点を対象として破断コンダクタンスの測定を行い,接点破断の臨界電流密度jcを求めた.Al,Znのjcは貴金属のそれよりも低く,融点に対してほぼ直線的な依存性を示す.この結果は,ナノ接点の電流誘起破断がエレクトロマイグレーション或いは接点の融解に起因することを示唆している.一方Pt,Moの場合には,jcはAlと同程度であり,融点とjcの相関は成立していない.しかしPt,Moのd電子に対してはjcの導出に使用する接点断面積の評価式が適用できない可能性があり,高融点金属のjcの値に関しては,まだ曖昧さが残されている. 2.MCBJを利用して貴金属およびZnの原子サイズ接点が示すコンダクタンスの2準位揺らぎを低温で測定し,その周波数から接点の実効温度を評価して高バイアス下における接点発熱の有無を調べた.77Kでは,Ag・Zn接点はそれぞれ0.5V・0.4V以上で実効温度が上昇し始めるのに対して,Au,Cu接点は0.6Vまで温度上昇を示さず,金属の種類による相違が明らかとなった.また4KにおけるAu接点では,実効温度はバイアスに対してほぼ直線的に上昇することが新たに解明された. 3.MCBJの電極に単一の多層カーボンナノチューブを架橋し,そのコンダクタンスを測定することに成功した.特にコンダクタンスのバイアス特性,高バイアス時のコンダクタンスの不可逆変化,ナノチューブの電流誘起破断,等に関して多くの実験的成果が得られている.
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