2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17310140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
刈間 文俊 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00161258)
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Keywords | 漢字廃棄論 / 漢字簡体字案 / 訓読法 / 中国語 / 中国農村 / 中国伝統美学 / 地方主義 / 農地収用問題 |
Research Abstract |
A)言語文化面:(1)中国清末以来の漢字表音化運動の自己展開として現れた銭玄同の漢字廃棄論が、文字の簡略化(字画の削減)論へと変化し、しかも南京国民政府の国語政策の一環として、1934年の簡体字案に結実したことを明らかにした。さらに,この改革案は、中華人民共和国の簡体字案にも批判的に継承されていったプロセスを展望した。(2)ベトナムには、「訓読法」は存在しないが、字音だけによって読解するのではなく、それに対応するベトナム語固有語で表わされる「意味」を経由して読解していることを明らかにした。(3)日本における「訓読」には、「訓点」のような補助符号の側面と、漢字の「訓読み」の側面とが混在しているというユニークな点があることを明らかにした。(4)近現代中国随一の審美主義者である周作人においては、「美」が、視覚的聴覚的な「快」だけではなく、理知的な判断による快感を重要なものとして含むものであることを明らかにした。それは、中国伝統美学つまり古代中国語"美Mei"の歴史的な意味内容を強く反映したものであった。 B)社会制度面:(1)一見したところバラバラに見える中国における村民自治・農民上訪・税費改革など近年の動きが、実は国家による「農村リーダー制御の政治」に連なるものとして結びつけられている点を指摘した。(2)中国における農地収用問題において、地方主義リスクが主観的には重大なファクターではあるものの、全体的に評価すれば、農地収用問題による政権動揺の可能性は低いと結論づけた。
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Research Products
(5 results)