2005 Fiscal Year Annual Research Report
民主化後の「新しい」指導者の登場とグローバル化:アジアとロシア
Project/Area Number |
17310141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, 大学院・アジアアフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 幹 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (50253290)
河原 祐馬 岡山大学, 法学部, 教授 (50234109)
左右田 直規 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (30345318)
岡本 正明 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (90372549)
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 助教授 (80320381)
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Keywords | 民主化 / グローバル化 / アジア / 政治指導 / マス・メディア |
Research Abstract |
本年度は新しい指導者が登場してきた背景としてのグローバル化に伴う社会経済の変化の解明に重点を置いて研究した。1つはマス・メディアであり、そこに生じた変化、指導者による新たな活用といった点である。もう1つは政治指導者の資金調達が産業界とどう関連しているのかという点である。この枠組みのもとで、各自が個別に研究を進めつつ、4回の研究会を開催して意見や情報の交換を行った。マス・メディアや政治資金ルートに生じた変化が新しい指導者の登場に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきた。 タイの事例として説明しよう。タックシンは2001年総選挙で大勝をおさめて政権を握った。彼の登場の背景には次のような事情があった。 (1)グローバル化に伴う経済界の激変が政界地図を書き換えた それまで大口の政治資金提供者となっていた業界が1997年の経済危機によって壊滅的な打撃を受け、既成政党は党勢の衰退を免れなかった。携帯電話会社を核として事業を急速に拡大したタックシンは、危機の打撃を免れてむしろタイ有数の富豪にのし上がり、独自の政党を立ち上げた。同党は経済界からの献金に依存しない点に特色がある。 (2)グローバル化への反発としてのナショナリズム感情を支持動員に利用した 経済危機後融資の見返りに厳しい条件を課したIMFへの怒りが渦巻く中、タックシンは自党を「愛国党」と命名したことに示されるように、ナショナリズムを支持調達に利用していた。 (3)メディアの活用に格別の注意を払ってきた タックシンは自らを商品に見立ててその売り込みに熱心である。メディア関係者の饗応には定評があり、政権獲得後は毎週ラジオ放送を担当して有権者に直接に語りかける一方、広告契約を用いてメディアの政府批判報道を牽制している。 これら3点は、細部や程度の違いはあるにしても、韓国、マレーシア、インドネシア、ロシアにも共通して観察される。
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Research Products
(7 results)