2006 Fiscal Year Annual Research Report
民主化後の「新しい」指導者の登場とグローバル化:アジアとロシア
Project/Area Number |
17310141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 幹 神戸大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (50253290)
河原 祐馬 岡山大学, 法学部, 教授 (50234109)
岡本 正明 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (90372549)
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 助教授 (80320381)
滝田 豪 大阪国際大学, 法政経学部, 講師 (80368406)
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Keywords | 民主化 / ポピュリズム / グローバル化 / 多国籍 / 政治指導 / マス・メディア / 選挙 |
Research Abstract |
タイ(タックシン)、韓国(盧武鉱)、インドネシア(ユドヨノ)、ロシア(プーチン)を主たる対象、中国(胡錦涛)、マレーシア(バダウィとマハティール)、インド(人民党)を比較事例として、新しいタイプの指導者について、1.登場の背景、2.今後の民主化に与える影響、を研究した。次のことが明らかになった。 1 背景 (1)民主化に伴い指導者が選挙を通じて選ばれるようになったことが新しいタイプの指導者の登場を可能にした。(2)1990年代に政治経済の激動を経験し(経済危機、長期政権の崩壊)、国民が危機からの脱却を可能にしてくれる強い指導者を待望した。(3)既存の政党組織よりも、個人的な人気によって、支持を調達している(自由で公平な選挙が実施されているとはいえない中国とマレーシアは例外)。(4)指導者は国民に直接訴えた。危機で傷ついた国民の自尊心の回復、危機の打撃を受けた経済再生とりわけ弱者の救済をスローガンとした。このいわゆるポピュリズムの側面は中国やインドにも共通していた。(3)(4)双方の背景には、放送メディアやインターネットの積極的な活用が宣伝を容易にしたという事情があった。 2 影響 (1)強い指導力を発揮できた事例とそうではない事例がある。韓国とインドネシアでは期待外れに終わり、タイとロシアでは期待通りとなった。(2)民主化にはさほど大きな影響はない。有権者が民主主義の幻想から醒めることは、民主主義の定着に寄与しているように思われる。(3)タイだけは例外であり、民主主義の否定に帰着した。強い指導者の登場を嫌う伝統的エリートの意向を受けて、そうした指導者の再来を阻止するための新憲法起草が始まった。
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