2006 Fiscal Year Annual Research Report
「差異化」を超えるアジアからの試み-持続可能な国際平和協力の構築
Project/Area Number |
17310144
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉村 慎太郎 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (40220735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
マハラジャン ケンシャブ・ラル 広島大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (60229599)
吉田 修 広島大学, 大学院社会科学研究科, 教授 (60231693)
三木 直大 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (10190612)
町田 宗鳳 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (10334450)
外川 昌彦 広島大学, 大学院国際協力研究科, 助教授 (70325207)
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Keywords | 市民社会的公共 / エスニック・グループ / 大衆文化 / 権力とコミュニケーション / 文化的共同体構築 / 歴史の記憶 / 民主化 / 宗教的コスモロジー |
Research Abstract |
本年度は各研究分担者が各々の研究対象地域・分野で、「差異化」の諸相を体系的に捉えるための資料(史料)分析とフィールド調査に集中的に専念した。研究会自体は4回と数少ないが、一部メンバーはケンブリッジ大学、テルアビブ大学で研究成果を報告し、積極的な成果発表に心がけた。 本プロジェクトで分析対象に設定し、また種々の手法・切り口でその克服を目指す「差異化」は制度的諸相に関わるものだけでなく、人間の心的深層に及ぶ。この点は、太平洋戦争の記述の調査(三木)により戦争の記憶が支配する歴史認識、ネパール/ヒンドゥー至上主義に着目し、経済的・地域的差異化より根深い言語と宗教の「差異化」の相乗効果を分析した議論(マハラジャン)に顕著に現れる。一方でかかる「差異化」による緊張や対立・紛争の克服に向けた方向性が複数提示された。すなわち、社会レベルでは(日流・韓流に顕著な)流行形成の促進(尹光鳳)、聖者信仰に認められるヒンドゥー・ムスリム社会の歴史的交渉過程(外川)、知織人レベルでの「個の尊厳」や「民主化」言論活動の展開(水羽信男)がある。また、言語的「差異化」克服に向けた運動(例えば、ネワール民族の「ネワー・デー・ダブー」)、「太平洋島嶼フォーラム」の「地域的市民社会」形成(小柏葉子)、フィリピンの階層横断的「公共空間の生成」(関恒樹)が注目すべき事例と言える。さらに、多様性を包摂した宗教的「ナショナリズム」(「タウヒード」論、吉村)やコスモロジーとしての「アジア的多神教文化」(町田)は宗教的切り口から示唆的である。可変的かつ多様な実態を前提に、「差異化」による集団間対話(コミュニケーション論、上原麻子)と権力の対抗性、それを乗り越える手法開発に向けた研究が来年度の個別調査の一層の充実と共に、重要課題として確認された。
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Research Products
(13 results)