2007 Fiscal Year Annual Research Report
暴力と人間存在の関わりについての理論的および実証的な全体研究
Project/Area Number |
17320010
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
谷 徹 Ritsumeikan University, 文学部, 教授 (40188371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加國 尚志 立命館大学, 文学部, 准教授 (90351311)
服部 健二 立命館大学, 文学部, 教授 (40148383)
竹山 博英 立命館大学, 文学部, 教授 (90288621)
飛野 克己 立命館大学, 文学部, 教授 (90411149)
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
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Keywords | 暴力 / 心身 / 倫理 / 教育 / 法 / 社会 / 芸術 / 生命 |
Research Abstract |
暴力と人間存在の関わりを理論的・実証的に明らかにしようとする本研究は、メンバー各自の研究と発表、内外の先端的研究者の講演など(合計19回)をつうじて研究交流を進め、以下の成果を得た。第一に、暴力が家庭・教育・社会・倫理・法・政治・文化・歴史的な背景との関係で多様に現象してくる様が具体的に示された。第二に、音楽や庭園のような一見暴力的と思われない芸術領域における暴力が露呈された。第三に、暴力を単に外部から描いたり考察したりするよりも深く内的に引き受ける思想のあり方が示された。 これら個々の成果とともに全体的な成果として、以下のことが明らかにされた。暴力は、攻撃欲動のような人間の広義での心理的な事柄から生じると考えられることが多いが、しかし、本来的には、それを含んで「人間が(自然・文化・社会のなかで)存在する」ということ全体から生じる。この「人間」と「存在」とのあいだにある種の対立関係(と贈与関係)があり、これを根源としつつ、暴力は人間を媒介として現象する。「人間」は「存在する」かぎり、暴力の「媒体」として機能し、その暴力を人間と他の人間(他者)との関わりのなかで増幅する。こうして眼前に現われた暴力は、しかし、時に暴力の本質を覆い隠す。その隠れる本質を現象させようとするのが、暴力への別の「関わり」としての暴力論である。このことから、「存在」との、そして「他者」との(不調和で非対称的な)対立関係のなかにある「人間」が、しかしまた「媒体」でもあるがゆえに、暴力の現象に内的な責任をもつ仕方で暴力との関わりを立て直す-いわばドイツ語のumstelllen-可能性をもつことも示された。ひとつは、暴力へのある種の「抵抗」-Widerstand-としてその「本質」を暴きつづけること、もうひとつは「助」-Beistand-という言葉が暗示する「力」の可能性を探ることである。
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Research Products
(29 results)