2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17320011
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
砂山 稔 Iwate University, 人文社会科学部, 教授 (00091702)
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Keywords | 道教 / 文学 / 茅山派 / 重玄派 / 李白 / 李含光 / 清真 / 復古 |
Research Abstract |
19年度は、「隋唐道教と文学」を課題とする研究の最終年であった。そこで、主として盛唐時代における李白と道教に関する研究を行い、一定の結論を得た。それを以下に示す。 韓愈は「薦士」の中で、「国朝文章の盛なる、子昂始めて高踏し、勃興李杜を得て、万類は陵暴に困しむ」と言う。これは陳子昂を先駆者とし、李白の復古主義への貢献も含めての評価であろう。李白の代表作「古風」五十九首は、実は復古主義による幻視によって謂わば原道教を把握した著作であり、それは韓愈が「原道」で儒教に対して達成したことを、緩やかながら道教において達成した著作であると報告者は見ている。 道教徒的詩人と言われる李白の作品から期待されるような盛唐当時のモダンな道教に関する情報がそれほど多く得られないことは、報告者の積年の疑問の一つであった。しかし、復古主義を標榜した李白が道教に対する主体的な関わりの中で道教の原型を求め、主としてこの謂わば原道教、プロト・タオイズムを詩に詠じたのだとすれば、疑団は氷解する。この原道教は、歴史的には早期に現れたもの、具体的には魏晋以前のものが中心とはなるが、道教の基層として通歴史的に現前するものである。それは漢民族の共同幻想とも言えるものであろう。李白が広く中国で愛される所以である。人生無常の哲理を深く感得していた李白は、隋・初唐の重玄派道教のような緻密な理論的道教ではなく、不死を追求する神秘的で実修的な道教を求めていた。それが彼を茅山派道教に接近させたのであろう。
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Research Products
(1 results)