2007 Fiscal Year Annual Research Report
空間思想の比較史的検討とそれに基づく人文・社会科学理論の構築
Project/Area Number |
17320020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山室 信一 Kyoto University, 人文科学研究所, 教授 (10114703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早瀬 晋三 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (20183915)
菊地 暁 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80314277)
坂本 優一郎 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (40335237)
谷川 穣 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (10362401)
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (00362400)
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Keywords | 空間 / 統治システム / 地政学 / 景観 / 思想史 / 経済学 / 宗教 / 戦争 |
Research Abstract |
近代の人文・社会の諸科学は、さまざまな空間を空間そのものとして即自的に捉えることなく、対象となる空間的差異を文明-未開、進歩-停滞といった時間軸に沿った関係に置き換えてきた。他方、21世紀においてはグローバル化の進展の中で、歴史的にもさまざまなかたちで生起してきた空間を分節化するダイナミズムが一層見失われる趨勢にある。本共同研究は、専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を拾い上げながら、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めることにある。今年度は、昨年度までの活動の成果を踏まえて、文献の理論的考察を現地のフィールドワークによってさらに深めるとともに、研究成果の公表へむけて作業を進めた。 (1)昨年度に開催したナチズムに関する公開シンポジウムでの議論を、論文集として公刊する準備作業に着手した。青弓社を出版社として選定し、本科学研究費プロジェクト終了時に研究成果を社会に公表できるよう、各自論文執筆を進めた。(2)公開シンポジウムでの議論を踏まえ、戦争と空間との関係を新たな研究対象として採りあげ、検討した。とりわけ、空間記憶とその表象としてのモニュメント建築、墓苑や追悼空間をめぐる諸問題については、旅費によりイギリス・オランダ・ドイツ各地でのフィールドワークを実施した。その結果、教会のような宗教的空間と世界大戦の関係、政府中枢部の空間構成における戦争表象の意味、港とコスモポリタン的な戦争表象、ナチス・ドイツによる空間表象、ドイツにおける第一次世界大戦の空間的表象の「欠如」など、具体的な知見をえることができた。また、空間形成とともに、それを破壊していく要因としての戦争、あるいは破壊的創造としての地域統合(たとえばEUやユーロリージョンの試み)についても、今後の考察課題として認識を深めることができた。これらのフィールドワークによって、これまでの理論的文献会読によって得られた知見と、現在の社会・国家における空間形態の実状との整合性について、研究討議を深めることができた。
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Research Products
(13 results)