2005 Fiscal Year Annual Research Report
日仏美術交流史研究 -ジャポニスム、コラン、日本近代洋画-
Project/Area Number |
17320024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 篤 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10212226)
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Keywords | 美術史 / 美学 / 芸術諸学 / ジャポニスム / アカデミスム / 19世紀フランス絵画 / 交流史 |
Research Abstract |
本年度は、「エキゾチスムとしてのジャポニスム」の問題に取り組んだ。 基礎的な調査として、19世紀後半のフランスのサロン(官展)に展示された絵画作品の内で、日本を主題、モチーフとした出品作を、サロンのカタログの悉皆調査から抽出した。その上で、サロン絵画写真集、挿絵入り雑誌の日本関係記事などを通して、具体的な画像の割り出しを行った。その結果、1870年代をひとつの頂点として日本趣味絵画の流行が見られることが判明した。よく取り上げられた主題やモチーフとしては、《日本の化粧》(フィルマン=ジラール)、《日本の雑貨屋》(カストル)、《日本の渡し舟》(ルノワール)のように、日本女性の官能性や日本の風俗の物珍しさを強調したものが目立っている。そのことは、当時の日本紹介記に見られる日本イメージとも一致する。 サロンで活躍した日本趣味画家たちの中から、《日本の化粧》を描いたフィルマン=ジラールの場合を精査した。1870年代前半に数点のジャポニスム絵画を制作しており、やはり和服を着た日本女性を中心にして、日本の品物を配した作品が多い。描写も細緻である。エキゾチスムとしてのジャポニスムの典型例として注目に値する。 さらに、サロン出品作以外の美術品として、公共の場に置かれた壁画や彫刻におけるジャポニスムの問題も検討した。1878年のパリ万国博覧会のときに制作された6大陸寓意像における「アジア」の表象は、やはり日本女性を中心モチーフとしているし、パリのフランシスコ・ザヴィエル教会やサクレ=クール寺院の壁画にも日本女性の姿が描き込まれている。日本趣味の流行は、印象派のみならず、広い範囲に及んでいることが理解される。
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Research Products
(3 results)